江戸川コナンと魔物の子 | ナノ


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そいつは入学当初から俺と違う意味で注目されていた。容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群とまさに天が二物三物も与えたような存在で、交友関係も広く、穏やかに笑っている、そのくせ、ふとした瞬間に悲しそうな表情を見せるのだ。何かを探すかのように目線をさ迷わせると、窓の外にある木々を見て諦めたように笑い、いつも持ってきている緑のスポーツバックを見ては拳を握り締める。


何気ない仕草はきっと、俺だから気づいたこと。





――――そんな男の名前を高峰清麿という




「高嶺君のこと?」
「あぁ、川野、中学はアイツと同じだろ?何か知ってることとか…」
「知ってることかぁ」




高嶺と同じ中学だった川野におれはそう問いかけた。
顔立ちもかわいらしい分類に入る彼女は性格も相俟って学年を通しても人気がある。そんな川野は「んー」と声を出しながら首を横に傾けつつ、思い出そうと必死に頭をひねる。なんだか少しだけ申し訳ない。そんな彼女が「あ」と声を出して俺を見た




「ガッシュ君かな…」
「ガッシュ君…?」
「そう、高嶺君ね弟ってわけじゃないんだけど、中学生の頃、一緒に同居してた子がいたの。金髪のちょっと変わった口調の子で、仲が良かったんだよ」
「良かった…?今は悪かったりするのか?」
「まっさかぁ!下手な兄弟よりも仲が良くって、ガッシュ君てば高嶺君に会うためによくスポーツバックに入り込んで学校に来てたんだよ。清麿〜!って言いながらさ、そのたびに高嶺君ってば怒ってて、ふふ、懐かしいなぁ、元気かなぁガッシュ君」




ふ、っと目を細めた川野は高嶺が良くするような表情を作ってどこか遠くを眺めた。
そんな表情を見つめ、いくつかの謎が解ける
恐らく、高嶺の奴がいつも何かを探すかのように目線をさ迷わせるのは、そのガッシュを探しているのだろう。スポーツバックをいつも持ってきているのもきっと、そういう理由だ。さらに言うなら、そのガッシュという子はすでに高嶺の近くにはいない。だからこそ探す。そしていないことを再確認して寂しさに暮れるのだろう。川野に別れを告げた俺はその足で自分のクラスに向かった。今は放課後、この時間、高嶺は校庭を眺めて読書をしているだろうから、きっと捕まえられる。そんな思惑を抱えて静かに教室の扉をスライドさせれば、ふわりと風に髪を遊ばせて楽し気に校庭を見下ろす、―――天才児と呼ばれる彼がいた。
 優し気に校庭を見下ろすそいつの目には何が写っているのだろうか。俺にはただ、野球部が泥にまみれて練習しているようにしか見えなくて、けれど、なぜだか見て見たいと思った。あんなに優しい顔をして、そんなに優しい目をして見つめるその先には何があるのか、見て見たいと思った。


 高嶺の花。陰でそう呼ばれていることをこいつは知っているのだろうか。




「高嶺」
「…あぁ、工藤か、どうした?というか珍しいな、お前から俺に話しかけるなんて」




校庭へと向けていた瞳が俺を写す。日本人らしい黒い目が俺を見抜いて、純粋に驚いたと言わんばかりの表情。いや、驚いたんだろう




「…、よかったら、一緒に帰らねえか?」




気づけばそんな言葉が俺の口からこぼれていた。


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