そんなマーリンの忠告をきれいに聞き流し、私は戦場に居た。一日中(ガチ)馬にまたがり戦場を視察する。
…というか、バーサーカーのナイチンゲールを見たことがあるせいか、戦場の惨状を見れば叫び出すと思っていた彼女は意外と冷静に物事を見つめている。
まあ、アレはバーサーカーの補正がかかっていたのもあるんだろうけれど
なにより、思った以上に平和だなとニコニコ微笑んでれば、後ろから早馬が駆けてくる
何事だろうと思って後ろを振り向けば、いつの間にかナイチンゲールも案内をしていた大佐も居ない、いるのは後ろで息を荒らげた早馬の男だけだ
「た、大変です!ナイチンゲールさんが、…ナイチンゲールさんが作戦本部に殴り込みに!」
「やっぱバーサーカーか」
私が物思いにふけっている間に馬を操作して作戦本部(テント)に殴り込み(比喩)に行った彼女を止めず、どうしてこちらに早馬飛ばしてきたんだ君ら。
呆れた眼差しを向けながら馬の手綱を操って近道だという森に向かって走らせた瞬間、足元が光った
「――は…?」
なんで…?
小さくつぶやいたソレに応えてくれる人物などいない
前を走っていたはずの兵士に視線を向け、その唇が歪んでいるのだけが見て取れて理解した
―――地雷地点だ、ここ
熱風が肌を焦がす衝撃と地面が抉れる音。咄嗟に結界を張った。この世界に来て初めて使った魔術がこれなのは不服だ、でも、間に合わない
聞いていた、前々からわかってはいた。
ナイチンゲールが狙われていることは、知っていたのだ
敵地で噂になっていた戦場へ復帰する兵の速度の異常性
そして味方である軍の幹部が疎ましく思っているナイチンゲールの存在
今ここでナイチンゲールを消すということが愚策だと彼らは知っている。だけど何とか痛い目にあわせたいってところだったんだろう、ソレに選ばれたのが私か。味方であるはずの軍の幹部と敵陣が裏でつながってるなんてよくある話だ。利害の一致ともいうけれど
熱を感じ、強烈な痛みを認知した瞬間、私の身体は粒子となり弾け飛んだ