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「一年?森の賢者?…あぁ、あの結界そういう仕組みだからね、気づかずに時がたつのが嫌なら張り替えたほうがいいよ?」
「それを早く言いなさい」
「ごめん、ごめん、忘れてた」




えへへと花を飛ばしながら撫でてくれと言わんばかりに抱き着く彼の頬を掴めば、嬉しそうに花を飛ばす。
やだわこの子、何しても花を飛ばしてる。




「あと、森の賢者っていうのはあの時代における香の【役割】だよ。結界から出るときにフードして杖持ってるからねぇ。あと、迷った旅人を森の外まで送るし、怪我した騎士を魔術で癒したりしてたからそういう異名がつけられたみたいだね」




今じゃあの村どころか国全体、または隣国まで知られているよ。

ニヨニヨという表現が相応しいほどに顔を緩ませるマーリンは楽し気だ。




「へぇ…」
「おや、割と驚かないね」
「まあ。最初はどういうことかと動揺もしては見たんだけど…。よく考えたら私、玉藻の時に神様扱いだったし…」



『御子神様――!』
『どうか、どうか天照大御神にお取次ぎを!』
『閉じこもって出てきてくださらないのですっ!!』
『とりあえず元凶(須佐之男命)張り倒しとけばいいんじゃないかな』




蘇るのは玉藻が閉じこもったときの話だ。あの後、須佐之男命、略ってスサ君を叱り飛ばして蹴飛ばしたのはいい思い出だ。勿論私が。

それにしても、【森の賢者】ねぇ…。




「将来マーリンが近い名前をもらうかもね」
「え、香とお揃いかい?」
「不満?」
「まさか!!」




すごくうれしい。

蕩けるような笑みを浮かべて私に抱き着く彼は先程以上に花を大量生産しては消してゆく。

そんな彼に思わず笑みがこぼれた



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bkm






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