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はじめは偶然だった。そういってこの出会いという物語を始めよう





私が今回飛ばされたのは女性が男の付属品としてしか価値を認められない地域。
現代であればそこそこ改善していると言われるが、それでも差別が残る国。

その神代にたどり着いた私がしたことは森に身を潜め、生活することだった。

さすが神代と言うべきか、現代ではお目にかかれない霊草を見つけてはテンションを上げて採取していれば、森に迷い込んだ子供と出会う
頼りなさげに地面を見つめながら歩くその姿に私はなぜか放っておくことが出来きずに声をかけた。




「どうしたの?」
「だれ?」




不安そうに見上げる黒曜石のようなきらめきを持つ瞳

不安そうに見上げるくせに、やけに意志が籠った瞳だ




「私は、……そうだね、モブ子とでも呼んで」
「もぶこ…?」
「そう、私にとってその名前は願掛けみたいなものだから。」




その願掛けが叶ったことがあるかは別としてね。

霊草を多く入れた籠を地面の上に置いて、泣いていた彼を抱き上げれば小さく悲鳴を上げられる。安心してくれ、誘拐犯じゃない。




「お父さんとお母さんは?」
「わからないんだ、気づいたらここに居た」
「…気づいたらここに?」




コクンと小さく、けれど確かに首を動かした彼に、私は眉を顰める。
おかしい、この周囲には結界を張っていたはずだ。最初は結界のほころびから入ってきてしまったのかと思ったが、頭を撫でつつ話を聞けばそうとは思えない。
知っている道を歩いていて急にこちらに出たということはこの子、多分、英雄になる子だ。

私の張る結界に普通の人間は通れない。

通れるのはこの時代において過去か未来か、重要なことを起こす人物であり、神に選ばれた肉体を持つモノのみだ。これに例外は存在しない。

けれど数多の時代を行き来した私はあきらめたようにため息をつく。無駄にかかわりを持たないようにとしてもどうせ関わるんだからと自分に言い聞かせた(※この香さんはすでに二桁目(後半)の時空旅行を経験し、よく訓練された香さんです。)




「…しょうがない。お父さんとお母さんの所に案内してあげる。でも、まずは霊草を家に運んでからね」




空中にルーンを描き、籠を持ち上げ、少年を再度抱えなおせば焦ったように足をばたつかせた




「お、おれ自分で!」
「自分で歩くと死ぬけど?」
「……え」
「ここら辺、罠とか物騒なの置いてあるし、良くて片足紛失、高確率で毒を付与だから、あんまりオススメはしない。」




自分の身を守るために磨いてきたトラップ技術はとても役に立つもので、ありとあらゆる時代で私の身を守ってきた。

少々得意げに話してみれば、なにか恐ろしい化け物でも見るかのような眼差しでこちらを見つめる少年の鼻を強めに摘まむ




「それで?自分で歩くの?」
「このままでおねがいします」
「素直でいい子だね」




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bkm






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