5

「軍師、こっちにこい。」
「……その首輪はなにかな」
「あ?持ち物は繋いどかなきゃいけねえだろう」




嫌そうにこちらを見つめる瞳に自分が写る
派手過ぎず、しかし自分の所有物だと示す首輪。いや、首輪と呼ぶには弱いチョーカーの中央には自身の瞳と同じく赤い宝石が使われている。宝石の中には獰猛な獣が描写され、この人物は、コレは自分の所有物であると示すには十分な代物だろう。

それにもう一度目を向けた彼女は英雄へと目を向けた。
そしてスッとその目線を戦場へと向けた。いや、正確には戦場が行われた場所に向けた

座り心地のいい椅子に身を預けて、やはり考えるのはメイヴの事なのだろう。それがどうしようもなく気に食わない。
コレの首輪は一時的なものだ。キチンとした“隷属の首輪”ができるまでのつなぎでしかない。




「…軍師、首元失礼するぜ」
「−−−!!いっ…!」




気に食わない。せっかく自分のものになったのに。こちらを見ない瞳が実に気に食わない。
だから、その行動をしたのは意趣返しだった。チョーカーを嵌めると見せかけて、無防備にさらされたその首筋に噛みつく。強く強く。その身に自分という存在を刻み付けるように。

…そうすればプツッと何かが切れる音がして鉄の匂いと味が広がる。

不味いはずだ。それなのに肌が切れて流れた血は、彼女の血が異様に甘い




「いったぃ…!やめ、離して!」
「んっ、…じゅるっ」




甘い、甘い。貪りたい。すべて。全部。

欲が囁く。すべてほしいと。血でこんなに甘いのだ。彼女自身はどうなのだろうと。
嫌がる声が、吐息が、抵抗する彼女の体が、すべてがおいしそうに見えた。
暴れる体を押さえつけ、肌を暴いたらどうなるのだろう。この、あふれ出した枯渇感は収まるだろうか。彼女の首筋から顔を離して、暴れる彼女の肩を椅子に押さえつけた。口元についた血を舐めとって彼女を見下ろせば、無感情だった瞳に今では恐怖と恐れの感情を乗せている。息を上げて、怖いはずなのに睨みつける彼女にどうしようもなく、欲情した。

そしてようやく感情を向けてもらえたことにうれしさを覚える。

―――どんな感情でもいい。その感情を乗せて輝く瞳が見たかった…!

やはり魅力的だ。無感情よりもずっといい。次はその瞳に悦楽の色を乗せることができたなら。目を細めたとき、彼女の体が光りだした




「っ!」
「…うん。あんたの負けだねクランの猛犬」
「軍師!」




薄れる身体から光の粒子が上へと上がっていく。
彼女が逃げてしまう。そんな恐怖にかられた彼が触れようとするが通り抜けるだけだ。そして、最後は一気に弾き飛び、彼女の姿はどこにもなかった




「…は、ははは、ふざけるなよ…。どこに逃げようが捕まえる。絶対にだ」




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bkm






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