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「いらっしゃい香。まだ小さいままなんだね」
「背丈はあまりマーリンと変わらないよ」
「なにおーう」



ぷくぅと頬を膨らませた彼は不満そうに私を見つめる


いつもは、見上げなければ私の顔は見えないのだが、今の私と彼の身長はほぼ同じ。
少しうれしげに見えるのはきっと勘違いではないはずだ

というか私しがこの姿になってからお約束の光景ではあるのだけれど




「ま、いいや、香、今日は香にプレゼントがあるんだ」
「…プレゼント?」




いたずらする前の子供のように瞳を輝かせてマーリンは首を縦に振る
今から渡すものによほどの自信があるのだろう




「じゃーん!!」
「…杖?」
「あぁ!それもただの杖じゃない、この半魔である私が作り出した香特性の杖だぞう」




自信ありげに胸を張り、楽しそうに杖を手渡した彼を見つめる。桜が閉じ込められたような水晶が杖の先端にあり、その水晶を覆うように杖の木が伸びている。それは下のほうに続き桃色の蕾をつけていた。蕾の先からは黒いダイア型の鎖が杖の半分まで伸びている。

一番に目を向けてしまうのはやはり桜を閉じ込めたかのような水晶がある先端だが。杖自体も繊細な装飾と優美な色合いを持っていた




「ま、マーリンこれ…」
「ふふん!香に出会ってから少しして作り始めたんだ!100年の歳月をかけ、私の魔力で作り出した杖だよ、早々に壊れることもないし、物理にも強いんだ!…香はよくおかしなことに巻き込まれるからね。良ければ、もらってくれないか」




小さいマーリンの健気さとその心意気に感動して私はその杖を受け取った。
ニコニコとそのあとで自分の杖も披露し、お揃いだねと笑いあう。


幸せだ


今は同じ背丈だけれど、マーリンはマーリンで、小さくて純粋でかわいらしい。

ふわふわとしたその頭を撫でつけながら私は微笑んだ




「あ…」
「…?マーリン??」
「…香、夢から覚める時間みたいだよ…ふふ、なんだか寂しいなぁ」




それはもしかしたら、マーリン自身の本音だ
毎夜毎夜聞くそれは、少しだけ私の心に罪悪感をもたらしている




「…またね、香」
「またね、マーリン。杖、ありがとう。うれしかったよ」
「…!!、わ、私も!喜んでもらえてうれしかったよ!」











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bkm






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