「ギル君お腹空いてない?これ食べる?」
「え?あ、ありがとうございます」
肩に下げていた鞄から今日は事情があり口に入ることのなかった飴やらチョコやらを取り出して渡せば不思議そうに袋に入ったそれらを見つめる
そしてこれが食べれるのかと言わんばかりに私を見、手のひらを見、私を見、とするしぐさに何とも言えない胸の疼き。かわいいなおいっ…!
荒ぶる感情を抑えつつ手で破るようなしぐさをすればその通りに両手を動かした
…ただ、力が強すぎたようで勢いよく飛び出した飴がギル君のおでこにぶつかりそのまま物悲しい音を立てて地面に落ちる
フォローもできないほど見事な一連の出来事に思わず真顔になってしまった
「……っ、すみま、せ」
「だだだだ大丈夫!まだあるし!」
ふるふると体を震わせて目じりに浮かぶ透明な雫に思わずもう一つ渡せば、今度は慎重に袋を破り鮮やかな色をした飴玉が姿を現す
「できました!今度はきちんとできましたよ!」
どうですか?と得意顔で笑いかける姿が可愛いからもうそれでいいと思うよ
食べなと促せば恐る恐る口に含み、ぱっと顔を明るく輝かせた
「甘いっ!」
「そっか。よかったね」
「姿は全然違うのに桃の味がしますっ!」
片方の頬を膨らませながら律儀にも感想を零す姿に思わず笑ってしまう
ホントにこんな天使がどんな変化を遂げてああなるんだろうね?
ちなみに我が家の最初の☆4はデオンちゃんだった尊い。2番目はオルタな黒い騎士王だったよマーリン狙ってたピックアップで4回来てくれたおかげで宝具レベルは高かったありがとうございます。☆5がいない我がカルデアでは救世主だった。
一心不乱に口の中の飴を食べているギル君を見つめながらスマホアプリに思いを馳せる
てかさっきガリッて音聞こえたけど砕いたの?なにギル君砕く派?私はある程度舐めて噛み砕く派だけど
「なくなってしまいました…」
「まだあるよ、食べる?」
「はいっ!」
シュバッと飴ちゃんを取り出せば輝く紅の瞳。もはや遠慮のなくなった10歳前後の少年。ヤバいな現代社会でこんなん見せたらお縄だわ…。
そう思いつつ彼にいくつか飴を渡して外を見上げればオレンジ色に輝く空
というか小動物眺めるのも乙だけど暇かな
「ギル君。食べながらでいいんだけど、お姉さんのお話聞いてくれない?」
「…?かまいませんけど…」
「ん。ありがと。じゃあ、ちょっと物語を話そうか。一人の賢王のお話なんだけどね」
勿論目の前のご本人の未来であるが脚色させていただく
そう、一人の尊大で怠慢で傲慢な王様の話
そしてその彼を愛した女神の話
彼の愛した国の話。彼が求めた不老不死の話と死んだ後のお話
脚色した話は幼い彼を引き込むには十分効力を発揮したみたいだ
「…ぼく、その王様とは気が合いそうにありません」
ぽつりと彼はそう呟く
「だけど、何故でしょう。他人だとも思えないんです」
煌めく紅の瞳が意志を宿して私を見つめた
「お姉さん。聞きそびれましたが、何者ですか」