…あの日から、半年とは言わずに数年ほど森に閉じこもり生活を送り、怖くてカルナにもアルジュナにも会いに行かなかった。いや、なんか怖かった。最初の方は。最初の一回は会いに行ったのよ?だけど目に入った瞬間に弓矢で撃ち落とされそうになったり、歓迎してくれてるなって思ったら部屋から出られないような呪いかけられたりすると会いに行く気すら失せるじゃん…??
これを10歳の子供がやったことに私は恐怖した
矢から逃れてアルジュナを見れば清々しいほど切れのある舌打ちをして完璧な笑みで
『すみません。足の腱を狙ったつもりだったのですが。なぜ避けるのですか?』
『・・・・・』
敬語と殺気と狂気のサンセット。なぜ私は怒られているんだろうか。
皮肉を言う気力も起きず割と素に近い返答をしてしまう
『殺す気か…』
『違います、痛みを与えれば飛べなくなるのかと期待しただけです。まったく。貴方が避けなければすべて上手くいったというのに』
『死ねと…?』
うん。無言で微笑み黙殺した彼は10歳児の顔じゃなかった
そのあと、逃げるようにカルナに会いに行くといつもと同じように笑い、自分の部屋に通した彼は【いつものように】物語をねだるものだから、私も癒されて嬉々として物語を語っていたのだが、そろそろ帰るかと腰を上げた時だ、いきなり部屋が光り、扉にふれると弾かれた。
目を丸くした私にカルナがクスリと笑みをこぼすと擦り寄ってきて、まるで大切なものを囁く様に声を出す
『ずっと一緒だな』
『…お約束を守れない子は好きじゃないな』
『悪い、今すぐに解除しよう』
ただ、良かった点は彼が非常に素直であったことだろう、一瞬にして部屋から出られるようにした彼は私の方を上目遣いで見上げきちんと謝罪を口にした
…うん、それに思わず許してしまいそうになった私は本当にダメな奴だとは思う
だけどそうしてしまうくらいに可愛いのだ。かわいくてかわいくて…。
……なんか、こう、狙ったみたいで怖い
なんていうのかな?捕食者が今か今かと言わんばかりに獲物を誘い込むような気配がする
だからこそ、その日はあえて許すと言わずに頭を撫でて帰り、…数年間ひきこもった
そしてちらほら流れる人探しの噂。
主に持ってくるのは鳥たちではあるが、たまに鹿がそれを教えてくれるときもある。
だから、まあ、うん。あれから数年たったし、彼らの頭も冷えただろう