こんなパターンもあるんだな、と私はとある少年の周りをふよふよと浮きながら思考する。最近夢の中でよく合うマーリンにでも聞いてみようか、小さいとはいえ仮にも夢魔だから何か知っているはずだ
三回目の時間旅行、ここがどこかは知らないけれど周りの人の肌を見る限り西洋ではないのだろう。そして今回、いつもの(といってもまだ三回目だけれど)時間旅行と違うのは私の姿が今の所一人の少年を除いて完全に見えないことお腹も空かないこと、眠らなくても良い事。
物は掴めるのに見えない人には触れることさえままならない。もしかしたか霊体している英雄はこんな感じなのかもしれない。そんなバカなことを考えながら、唯一私を認知する少年の周りをとんだ
足が地面につかないわけじゃない、歩けないわけじゃないけれど、この状態だと歩くより飛んでいる方が何かと便利なのだ。
そして私にまとわりつかれている少年はもうすでにソレになれている
なんせ生まれたときから傍にいるんだから。けれど扱いが雑なのはどうかと思う
「…今日はついてこない来ない約束では?」
不機嫌そうに、けれど周りに誰もいないのを確認して少年が私に目を向ける。それに目元を和らげるようにして笑いながら、私はさもおかしいと言わんばかりにくすくすと笑う
いや、別におかしくはないけれどね?
「約束?そんな約束なんてしていないわ。」
いつもの私と違う口調で、少しからかうように音を乗せればさらに不機嫌そうに彼は私を睨み付けた。第一理不尽だろう、私はあなたの“黒”ではないのに勝手にそれと同一視して。だから意趣返しに私はもう一人の“黒”を演じることになった。
…いや、別に中二病入ってる訳じゃなくて、子供の夢を壊しちゃいけないような、そんな気がしたのだ
「…好かないな」
「私が?」
「自意識過剰だ、残念ながらお前を嫌いだと思った事などない」
ホントに、残念ながらと彼は顔をしかめて広く優美な施しがされた廊下を歩く
…いや、うん、まぁ、彼が私を嫌うことはほぼないだろう、だって私は”彼“じゃない”黒“じゃない。
ただ、今の所だけど、彼にしか認知ができない幽霊のような存在なだけだから。