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「ソロモン、それ違う」
「え、あ、ほんとだ。」


10年前。事実を知って、そして現代に戻れずにたった時間。
王位継承を主張する彼の兄に割とろくでもないダビデと知り合いつつ何とかソロモンが王の座に腰を落ち着けた
うん。こういう身内のごたごたは慣れてるよ、戦はいっぱい経験しちゃったからね…!
可愛らしい少年から凛々しい青年になった彼は無事に国を治めている。まぁ、凛々しいのは外見だけだけども!中身はヘタレ・チキン・優柔不断がそろったぶっちゃけ王としての素質皆無の性格だ。な・の・に、生まれ持った才能か運命か、コイツはカリスマ性とやらを秘めていた。何をしてもいい方向にことが運ぶ。代表的なものなら最近彼が神様に「何が欲しい」と聞かれ「知恵が欲しい」と答え、神を喜ばせたこと。コイツの知恵が欲しいはぶっちゃけアレだ。女が欲しい、名声が欲しい、冨が欲しいと答え神の機嫌を損なわせないため、咄嗟の判断で思わず口から出た言葉。神はそれを謙虚で聡明であると結論づけたが…。私からしたらホントにただの見栄っ張りである。

彼の使い魔たちはそんな王を崇め奉ってはいるけれど、ホントにそいつでいいの?確かにそいつはお前らの産みの親だけどホントにそいつ崇め奉っていいの…

やめといたほうがいいと思うけど…。そして使い魔ができたときのコイツは「仕事減るかな…」と呟いていて思わず頭が痛くなった。しっかりしてくれ、お前王様なんだから。近々和平やらなんやらのために御妃様をこの国にまた迎えなきゃいけないのに…

というか何人と結婚するつもりだろうコイツ…。今何人?

先月も新しい御妃様が来たばかりだというのに。
知ってるからね、お前初夜だけしか通ってないの…王なんだから子孫残す義務を果たしてくれ。
そう言いだしたいのにふにゃふにゃと笑うこいつが夜の運動しているさまが全然思い浮かばない。いや、浮かばなくてもいいんだけどさ…



「フジ…?どうした?頭でも痛いの?」
「いや、考え事。こんな頭ゆるふわに国を任せていいのかと」
「し、しつれいだなぁ!!」



ぷくぅっと頬を膨らませて抗議する姿に殺意しか湧かない。小さい頃な「うそうそごめんね?」と頭を撫でて頬擦りをし、思いっきり甘やかしただろうが今は刺青みたいなものをその身に写し、目つきも鋭くなり、体もがっちりとした野郎を甘やかすことなど私はしたくない。甘えるな。

はぁ、と隠しもせずにため息を吐きながら私は冷たく仕事机に座りながら報告書に目を通す彼を眺めた
今の時代、西洋は布に文字を書く風習がある。現代とは違い紙じゃない。そもそもこの時代に紙を作ることができるのは中国だけである。四千年の歴史は伊達じゃないね。

紙の製作方法が伝わるのはまだまだ先の話で、今は布やら牛の皮らに描かれた文字を読むしかない。うぅ、紙が恋しい。そして未だ難しい単語が分からない自分が悔しい。10年居るだけじゃまだまだ読めないし書けないな…。言葉は通じれど文字が違うわけだし。というか言葉が通じるのもソロモンの魔術に組み込まれた術式のおかげだとも聞いた

もちろんそこは感謝してる。言葉が通じおかげで過去何度も助けられた。まぁ、助けられた状況を作ったのは紛れもなく目の前のこいつではあるが…



「そう考えると腹立つ」
「急に何さ!?」



誰に言うでもなくつぶやいた言葉に机の上でうーうーとうなっていたソロモンがすばやく顔を上げて私を見つめた。いや、ほんと、冷静に考えたら腹が立つわ…。
なんで成長したよお前。小さければまだ許せたのに



「いや、何でもない」
「何でもないって顔じゃないかったよぉ。目つきじゃなかったよぉ」
「ところでゲーティアどこ?」
「何する気!?まだ小さいゲーティアに何する気!?」



ガタッと勢いよく立ちあがったところ悪いけど書類ぶちまけんな。というか何もしないから。あいつ見た目は小さいけど精神幼くなくて可愛くない。下手したらお前より精神年齢高いだろ、知ってるんだからね。お前がゲーティアにたまに相談してること知ってるんだからね?というかアイツ口悪い…



「何もしない。ただ少し用があるだけ」
「…あぅ…。冷たい。フジが僕に冷たい。昔は甘やかしてくれたのに」
「めんどくさっ」
「ちょっと!」
「浮気されたから浮気し返してばれた後に『ホントは寂しかったの』 とか涙流しながら縋り付く女のようなめんどくささ」
「やめて、最近あった側室の話やめて」



奥さんが多いと大変ですね??私はその奥さん方の相手をしなければいけない職業にさせられてるけど。大体本妻をきめないから奥さん方が水面下だけにとどまらず水面上でも醜い宮中に争い勃発するんだよ…。お前のとこの使い魔も呆れて私に全部投げ出して来たからね「人間のいざこざは人間に解決させた方が楽」とのことだ。…ねぇ、お前らの主も人間なんだからそっちに投げろよと何度も思った
けれどソロモン至上主義の奴らがそれに耳を貸すはずもなく…



「ねぇ、ホントに腹立つんだけど」
「さっき何でもないって言ったばかりじゃないか!!」



もう嫌だ!とベットに直行しようとする魔術の王の裾を踏みつける



「あうっ!!?」



ビターン!!


勢いよく前のめりに倒れ込んだ彼はしばらく動かなかったがしばらくするとフルフルと体を震わせて腕を使い体を起こす

そして涙が浮かぶ瞳を私の方に向けた。琥珀の瞳が激しく揺れている。うん。嫌な予感がする。こいつ、まさか泣く気か…!
やめろよ、二十歳手前の男児が泣くとか誰得だよ。いや、もしかしたらソロモン王(ロマニ)押しにはご褒美かもしれないけれど



「…っ、ふじは…!」
「…」
「ふじはっ…!うう…ふじのばかぁーーー!!」
「言語力幼児」
「ううーーーっ!!」



悔しそうな表情で唇をかみしめる彼に思わず冷たい言葉を投げかけてしまう。だから大の男がそれやってもかわいくないってば。


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bkm






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