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事の始まりは三年前。目の前で攫われそうな少年を助け、一緒に逃げていたとき、どうやら私は別世界に来ていると判明した。その世界から何とか無事現代に戻れば続けて起こるは過去に行き、歴史上の有名人と関わるタイムスリップ的な何か。
それは大学生になった今でも続き、そしてもはや半分諦めかけた私はいつでも飛ばされていいように水と食料とこれまでの経験を生かして作り出したノートをいつも携帯するようになった。もはや軽く旅行の気分だったというべきか。というか平和な現代社会が、平和な日常が何処か物足りなくなり始めているあたり私は重症だろう。

某英国伝説に某西洋神話。ピラミッドに大海賊時代。戦争なんて頭が痛くなるほど経験したし物語の世界に飛んだなんてもはや私の中では普通のカテゴリ

そしてそのとんだ先で30年70年過ごすのなんて当たり前なんて時もあったけれど現代に戻ればたったの数日。脱力もした。というかおそらく解読できてない古代遺跡の文字を見せてもらえれば解読できる自信しかない。…まぁ、解読できてもなんで解読できるかは言えないので意味はないけれど。


まぁ、そんな感じで始まりの三年前から現在。










私は一人の少年に土下座されていた。

どういう事?って思うだろう。私も思うよ
少年の目の前に私が現れた時の彼の顔は忘れられない。といか忘れることなどできないだろうあの顔は。
琥珀が埋め込まれたような澄んだ瞳を限界まで見開いた彼は次の瞬間私に土下座したのだから。
わずか一瞬しか見えなかった顔は驚くほど整っていて褐色の肌に白銀のような髪が映えていた。けれど幼児に土下座させる大学生とは一体…?
美少年が瞳をうるわせて私を見上げる。というかここは異国だよね。なんで土下座を知ってるの少年。


とりあえず


「あー…少年、私のことはモブ…」



少年に、しかも記憶やらゲームをたどっても見覚えのない少年にもぶ子やらお姉さんやら呼ばせる大人ってどうなんだろう
変な人だよね?あれ?私またとんだからってお決まりのセリフ言おうとした??
この子が歴史上の人物とかは分からないけれど、わからないからこそそれはやばいんじゃ…
頭をめぐるソレはおそらく、いや、絶対長らく忘れてしまっていた常識と言うものだろう。

…ここは無難に本名を名乗った方がいいのではなかろうか。そのあと適当に呼ばされるなりなんなりしてしまえばいいのではないだろうか



「も…?」
「何でもない。とりあえず、私は藤とでも呼んで」



名字から引用した物で誠に申し訳ないけれど名前を言うわけにもいかないので…ちなみに本名は藤村 香と言う
面白味のない名前で誠に申し訳ないが意外と気に入っている。
目の前の少年はコテンと首を傾げて私を見つめ



「フジ、フジかぁ。不思議な響きだね。僕はソロモン」
「ん“ん”っ!!?」



おま、今なんて言った!!?え?ソロモン?ってことはロマニ!?
見覚え無いわなそりゃぁ!刺青ないもんね!?目元きつくないもんね!?
一見少女と見紛うばかりの顔立ちに騙された。そして本名言わなくてよかった!!

けれど、なぜこの少年は私に対し手合い頭に土下座をしたのか。
少年がどうぞ座ってと言うので部屋に遭ったベッドに腰を掛ける



「えっと、ね。まず、謝らなきゃいけないんだけど。僕、三年前から歴史逆行の魔法学実験をしているんだけど」



ここで嫌な予感がした。と言うか外見年齢的に一ケタの時からやってるってすごいな…



「その時、自分に駆けた魔術が違うところに飛んで行って平行世界を通じ君に付属して、えっとぉ、それでね?その反動で君を取り巻く環境がその付属してしまった魔術に慣れるため、または追い出すために姿を変えて、強制的にこっちの世界と君の世界が混ざっちゃって」



理論的にそれは本当に可能なのかということは今は置いておこう。嫌な予感が当たって頭と心が痛いけれど今は聞こう。



「君が今、こうなっちゃてる原因なんだ」



ホントに申し訳なさそうな顔に頭を抱えた
これが某クソ科学者だったり某お人よしのクズだったりするならば殴るなりなんなりした。というかぶっちゃけ彼の見た目が少年じゃなかったりやっていた。けれど目の前にいるのはホントに申し訳なさそうに謝る可愛い少年で、子供にクソ甘いと言われ、その自覚がある私に彼を叱り飛ばすとか殴り飛ばすなどできるはずもなく…結局その頭を撫でるだけにとどめた。少年ロマ曰く時間がたつにつれてその頻度は少なくなり、後五年もすれば消えるらしい。いや、この三年間三日に一度は飛んでたけど、そのつど親には迷惑かけたけど、まぁ、いいかと思えるほど彼が可愛い。どこの時代に飛ぶかはランダムだったため彼の元にたどり着くのも三年の時間を有したと。

すっごいファンタジー仕様。知ってたけど!
とばされても年を取らないことでそんな可能性あるって知ってたけど



「ところで私はいつ戻れるのかな」
「ごめんなさい。それもまちまちなんだ。飛ばされた時代と相性が良ければ良いほど、その時代に拘束される時間が増えるし、命の危機や対象者の身にこう、えっと、その、せ、性的な危険が迫った場合のみ、強制送還される仕組みで…」
「あぁ、うん。そっか、言わせてごめんね」



可愛そうなほど顔を赤くした少年の頭を撫でながら確かになぁと、目を細めた
命の危険か、ケルトの英雄に奴隷にされかけた時かな?実はすっごい変態だった黒ひげに銃口向けられた時かな?ウルクの未来王様の部下に剣先向けられた時かな?
性的な危機。某インドの英雄伝ぐらいしか思い浮かばない。いや、他にもギリギリはあれど本気でクソヤベェと思ったのはアレしかない

何処かのロクデナシ系夢魔はたまに夢に現れるか論外。そろそろアイツを排除する方法を知りたい

撫で心地のいい髪を指に絡めてほどく

くすぐったいと言わんばかりに照れて笑う少年はホントに可愛い



「とりあえず、しばらくよろしくね、ソロモン」
「うん。よろしくねフジ」



だから私は知らない。初対面だというのに驚くほどになついていた彼が何を考えていたのかなんて。向ける信愛は本物なのに、その愛がどれほど重いモノなのか、きっとこれからも気付かない

そして



「―――いない?どうして、この時間にはいつもいるはずなのに」



花の魔術師が困惑に顔を歪め
腹正しげに虚空を睨み付けていたという事実も





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bkm






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