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それからというもの、ほぼ毎日、土方歳三の藤に対する求愛行動は続いた。



ある日は花を

ある日は歌を

ある日は甘味を

ある日は簪を。



最初は冷たく突っぱねていた香も徐々にだが受け取る様になっていく。一度「自分にはもったいない。あんたの気持ちを受けてるわけでもないのに」と絞りの美しい藤が描かれる着物を持ってきた土方に対して首を振れば、彼は一瞬だけ何を言われたのかわからないという顔をした後に破面する




『お前に似合うと思ったんだ』
『応えてもらわなくても構わない。俺が送りたいと思って送ってるだけだ』
『下心がねぇかと聞かれれば嘘になる。だが、藤はお前の【花】だろう』




その言葉にときめかなかったのかと言われれば嘘になるだろう。けれど彼女はやめてほしいと思ってしまった。


送られるものが増えるたび、何かが積もっていく気がする

送られるものを身に着けるたび、くすぐったくて叫び出したくなってしまう。

送られるものを、、、送るものをもって、店の暖簾をくぐる男を、待っている自分が存在する


それを自覚させられそうで怖い。

ああ、きっとどこかでこの想いは溢れ出すだろう。それはもう、決定事項な気がしてしまってて。だからこそ、まだ春の訪れを感じさせるような景色の中で、頬を赤く染め、店の前で土下座する男の言葉は自分にとってひどく都合が良かったのだ。




「結婚、してくれ!!…でなけりゃ俺はここで腹を切る!」
「おいやめろ」




口に出た言葉は嘘じゃない。

嘘じゃないけれど、それ以上に胸の内は歓喜でいっぱいだった。

コレは仕方ないことだと、彼が逃げ道を塞いでしまったから私は彼の手を取ったのだと言い訳が出来るのだから。少しずつ形作られてきた想いは、そういう感じで実を結んだ。

土下座をして頭を下げる、どう見ても酔っぱらっている男に近づいて、腰に手を当てる。そして困ったような怒ったような表情で彼女は言葉を紡ぐ




「しょうがないので、結婚してあげますよ」




プライドの高い彼が頭を下げたという事実だけで、彼女は満足だった。

その様子を見ていた沖田が口元に手を当て目を丸くする。けれど、頬を興奮に赤く染め上げて、近くの隊員の腕をつかむと嬉しそうに泣き笑いを見せた。



それから数日はお祭り騒ぎだったと思う。主に新選組が



書類を書き上げて、秘密裏に婚儀を行い、近藤勇に提出して、つつがなく夫婦となった二人は、その一月後に同居することになる。そして、婚儀後の初夜ではさすがに荷が重いんだと打ち明ける彼女に対して「心の準備ができるまで待つ」という約束をしてしまった土方のある意味、地獄レースの開幕日となり、こっそりと彼女は自分の本名を彼に教える日となった。





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bkm






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