やりやがったな沖田。
自分の顔面に笑みを張り付けて私はここにいない少女に対して悪態をついた。横には何を考えているのかわからない表情で広場に設置された白拍子の舞台を見つめる新選組副長の姿。数分前まで一緒に来ていたはずの沖田総司は途中で他の組員を見つけたからあとは二人で!!と言い残し去っていった。それ以降会話がない。
―――きまずっ!!
その一言で私の気持ちは全て籠っている。気まずすぎて泣けてきた。帰りたいとても帰りたい。
「あー、なんだ、帰るか?」
頭上から降ってきた声に私は顔を上げる。少しだけ気まずそうにこちらを見下ろしていた。良く良く観察してみれば彼も彼なりに困っているようだ。
「―――、そう、ですね。帰りましょうお侍さん」
「ああ」
何処かひどく残念そうな声音
それに対して私は少しだけ笑みをこぼして前を歩く
―――ただし、そのペースは酷くゆっくりと
「ゆっくり帰りましょうか、お侍さん」
どうして自分がそんな行為をしたのかもそんなことを言ったのかも、ひどくこの男を……しいと思ったのかもわからないけれど、少しだけもったいないなと思ったのだ。
何がもったいないと思ったのだろうか。景色か、この男か。
だけど、男がどこか嬉しそうに笑ったから、どうでもよくなってしまった。
それなのに、
「――好きだ」
此方をじっと見つめて、真剣にその言葉を紡いだ男に対して私は、なんといえばよかったのだろうか
ただ一つ言えることはある。さっきまで二人の間に流れていた穏やかな雰囲気もう、どこにもない