「―――は、ぁっ。」
大きく息を吸い込んで、吐き出して、私はふすまに身体を預けながら崩れ落ちる。
少し反則だと思ってしまった。男の笑った、微笑んだ顔を見た瞬間に確かに跳ね上げた心臓を胸の前で押さえて、うめくように言葉を零す
「うっそでしょ」
この私が、“人ごとき”に感情を揺さぶられた。一瞬だけでもあの男の笑みを綺麗だと思ったことに動揺した。
あれ、今…、
―――今、自分は何を思ったか、人ごとき??何様だ、何になったつもりだ自分は。
「…うっ、ぇ」
気持ち悪い。気持ち悪い、気持ち悪い!!
今まで無視をしてきた疑惑も感情も何もかもがあふれ出して吐き気がする
ポロリと懐かしい感触が頬を伝う
「ははっ、いや、だなぁ」
いつの間に私は、人を辞めていたのだろうか。
とうの昔にやめていたのかもしれないけれど、今の身体は本当に人じゃないみたいで。反吐が出る。
すっと冷めた心が妙に冷たくて。何か足りなくて、でもその何かがわからなくて。
目頭が熱くなった