「ここ!ここのおだんごがすっごーく美味しいんですよ土方さん!」
「沢庵はねえのか」
「ここ甘味処ですからね?言いましたよね私。」
薄い髪を楽し気に揺らせ、丈の短い着物(今の時期的に浴衣)を身に纏った少女がお店を指して少々強面の顔をした男性に話しかける。けれど店に入る気はないようで、遠目から眺めているだけなのがなぜか印象深い
「いいなー、私も勤務中じゃなきゃ入るのに」
「知ってるか沖田、茶屋ってのは宿の役割をしてるところが多いんだ、大人向けのな」
「昼間からやめてくれませんかね。」
同意である。しかし事実でもある。昔から甘味処やお茶をしばく店は私の時代で言うラブホの役割を果たしている。はたしてはいるだ。ただ、私の勤める茶菓子屋(今後甘味処)は数年前にその役割を放棄した。理由としては店主及び売り子の年齢が関係していて、まあ、飾りなく言うならよそ様の夜の世話まで手が回らなくなったのだ。
…それにしても、と。ちらり、私服(江戸末期)を身に纏う二人をちらりと見上げて小さく舌を打つ
「沖田、ねぇ…」
まさか沖田総司じゃないだろうなあの少女。
目を細め、吟味するように騒ぐ二人を様子を観察しようとするがふと我に返って視線を外した。己から関わろうとしてどうすると。私はモブだ。どうせ関わったところでまた見送るのが落ちで。また、辛い思いをするのが…、
「あれ、…私、そう言えば最後に辛いとか悲しいとか、…泣いたの、いつだ」
小さくつぶやいたその言葉は風に攫われるように空気に溶けていく。
―――あれ、あれ…?
疑問が生まれ消えてく。疑問が生まれ、解決せずに消えていく。いつだった。いつまで悲しめてた?そういえば嫌だという感情も最近まで感じなかったな。
ひやりと何かが背筋に流れる
「やめよう、考えるの」
なんか地雷踏みそうだし、でもマーリンがココに来て姿を現さない原因は頑張って解明しようと思う