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ーーー数か月後ーーーー






「頼光」
「!!まあまあ、また来てくれたのですね!」
「うん、弓の修業は順調?」
「ええ、貴方が言う通り弓も剣も槍も、すべて鍛錬しています。」




穏やかに微笑む女性に私も微笑みを返した。男のような名前のたおやかな女性。彼女は己を頼光と名乗り、私は藤と名乗る。彼女との出会いは数年前。街はずれで泣いている少女を保護したのが始まり。相変わらず黒と金は時折どこかに赴いては酒や食料をもって帰ってくる。けれど最近はそれが頻繁で、そろそろ注意するべきか




「そうだ、藤、この頼光の話を聞いてください」
「え、どうしたの改まって」
「大事な話なのですよ?実はここ最近。港で暴れている酒呑童子と茨木童子という鬼を退治するよう言われたのです。金時が」
「あの泣き虫が?無理じゃないかな」
「ええ、私も思います、ですが退治するのは十年後。あの子も立派に成人しているはずですから。藤、大江山の付近に住んでいると聞きました。あの山へできるだけ安全に入る道はありませんか?」




これ、何と答えれば私は正解なのだろうか。ゆっくりと噛み砕きつつその答えを探す。




「悪いけど、わたしはあの御山には入ったことがないんだ」
「あ、…それもそうですね、母としたことがうっかりしてました…」
「頼光は最近その【母】って一人称板についてきたね」




話題を変えたくて無理やり違う話にすり替える。不自然だっただろうに頼光は一瞬だけ目を丸くした後、笑みを浮かべながら会話に入ってきた。その姿に少しの罪悪感を抱きつつ、目を背ける。なんとなく、気づいてしまった事実に目を閉じて

























だからこそ、この終わりは必然であったのだろう。略奪と殺戮に手を染めた鬼の末路。桃太郎に出てくる鬼にもこんな情けないものはいなかったな。ツンと鼻の奥がしびれて、倒れていく茨木童子の、金の遺体を眺めた。気づいていた。気づいていたとも。だけれど、人が死ぬのも妖が死ぬのも、それは自然の流れだ。それに彼女たちには次がある。椅子が用意されている。それなのに、私の心はどこか違うと叫ぶ。それがなぜなのかもうほとんど思い出せなかった。
悲しいはずなのに、泣きだしたいはずなのに、私は泣けなかった





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bkm






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