そんな会話から早10年。私は大江山の森にあるあばら家で一人ぷかぷかと煙管から流れる煙を見つめた。天照から渡されたソレは天上との連絡手段である。まあ煙管としての機能も果たすようで、天上から度々送られてくる霊草を詰めて吸うこともあった。この霊草、怪我や病気によく効き、身体を頑丈にする効果があるため重宝している。ゆらりと揺らめく一つの尾が月光の光に揺れて輝きをます
トタタタタタタッ
二つの足音を頭上に生える獣耳が拾う。慌ただしくこちらに駆け寄ってくるその音はどこか軽く楽し気で、知らずと口元を緩めた
「「藤ッ!」」
「どうしたの、童子たち」
鬼の角を生やした幼女がこちらに笑顔で抱き着く。うん、かわいい。
崩れた着物を直してやりながら数年前に拾った鬼の子を抱きしめればキャラキャラと鈴が転がるような声で笑った
「んっ、人間たちが御山をあらしている。だから退治してきたぞ」
「あんまり骨がなくて、うちすこぉしだけ熱がさめんのよ、相手してくれへん?」
褒めろと言わんばかりに笑う金髪の童子としな垂れかかり甘える黒髪の童子に苦笑しつつ頭を撫でれば、双方が嬉しそうに顔を崩す。「ご褒美だよ」と人里に下りた時もらった麦入りの握り飯を渡せば顔を輝かせてかぶりついた
「でも、まだ小鬼なんだから、あんまり無茶はしちゃだめだよ。」
いいね、と。言い聞かせて頭を撫でる。
素直な小鬼たちは不思議そうに瞳を瞬かせながらも頷いた。そうだ、この子たちはまだ知らないんだったか。人間という生き物は個では確かに弱い。けれど、数でまとまれば、彼らは強いのだ。
「ところで藤」
「ン?」
「その童子というなはやめぬか?童と言われるのは少々…」
「……、ふふ、金の童子は私に甘やかされるのは嫌い?」
「そうではなく!、そうではなく、だな…」
「ふふ、金のはな、背伸びしたいんよぉ。うちはまだまだ子供やさかい、たぁっぷり甘やかしてな?」
私のように耳や尾が生えていれば上機嫌に揺れていたのだろう。先程まではそっとしな垂れかかるだけだった黒い童子は私の膝に頭を置いた。ふわっと風に揺れる黒髪が黒いのの角にかかったので払う
「ええねえ。こんなゆったりとした時間が、うちはすきよ」
「私もだよ、ほら金。こっちにおいで」
話を遮られ、黒に出遅れた一等涙もろい子がこちらを見つめていたから声をかけてやる。そうすればパッと顔を輝かせ黒のが頭を置くのと逆に乗せてきた。