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……香は激怒した。必ず、ある意味純粋無垢である日本の最高神に対してをきちんと説教をせねばならぬと決意した。香には神々の考えがわからぬ。香は、村の町娘C希望のJKである。音楽の時間にリコーダーを吹き、放課後は友と遊んで暮らしてきた。けれども己の社会的価値の危機に対しては、人一倍に敏感であった。



「私の眷属であるのですからあり私の使いであるという証拠は必要だと思うのです」
「え、すでに属性過多である私にこれ以上の責め苦をする?」




お腹いっぱいなんですけどと肩を震わせて呟く香の耳には純白と呼ぶにふさわしい獣耳が鎮座していた。臀部の方には耳と同じく純白の美しい尻尾が一つ。香の脳内に謎のファンファーレが響き渡る


テッテレー!!香 は ケモミミ 属性 を 手に 入れた !!


ぶん殴りそうである。誰得だよと呟いてみるも目の前にご満悦な最高神がいるのだからソレも言えない。実に嬉しそうであり。「えへへへ、ふふ、ふふふふ」と聞こえる笑い声が怖い。この云百年間世話役だの教育係だの、いわば乳母のように世話を焼いてきた主人からのこの仕打ち、どうしてくれようかと考える。いっそ香と最高神が出会った千本桜と千本鳥居が立ち並ぶ庭に逃げてしまおうか。あそこは何十年か前に彼女から香に下げ渡された己の神域だ。




「で、この姿を与えたってことはどういうことなの、天照」
「ふへへへ、…っと、そうでした。えー、おほん、モブ子には今から下界に行ってもらいたいんです」
「下界へ?」




ピクリとつい先ほど生えたばかりの耳がピクリと動いた。耳につけられた鈴がシャランと音をたてる。心なしか尻尾の方ももの言いたげに揺れるが、香はそれに気づいた様子はなかった




「まあ、私としては、私が下界に行くときに一緒に来てもらえればと思ったのですが、他の神々からの進言でモブ子を先に行かせて下界に慣れさせておけと。」
「私を…?」
「ええ、なんでも今の下界は妖が溢れかえっているようですから、私が下りるのは少々危険なのです」
「仮にも天照は最高神でしょう」
「…。…?おや、いっていませんでしたか?私、下界に下りるときは人の子に魂を移す予定なので無防備になるんです」
「   」




絶句した。
それはもう絶句した。この神は何言ってるんだろう馬鹿なの死ぬの?と失礼極まりないことを考える程度には混乱していた。

―――え?人の子に貴女が宿るんですか?鴨葱どころの話じゃないですよね?鴨がネギと調味料とその他もろもろを自分で持ってきて「さあ食べてくれ」状態ですよね?

聞き返さなかったけれど周りにいた天照御付きの天女たちが気まずそうに眼をそらす。


まあ、つまりそういうことである。お目付け役とは名前の通り本当にお目付け役だったということだ。天照が天上に帰るまでお守りしろということである
やだ、頭痛い。




「あぁ、それからモブ子」
「…?」
「その尾ですが、それはあなたの命であると考えてください。そして、年月が経つにつれてその尾は増えていきます。最大九つまで。尻尾はあなたの力であり、生その物。もし、失うことがあれば貴女は死にますよ」




ブワッ

一気に膨らむ尻尾に私はどこか冷静に「あぁ、ほんとに私の身体から生えてんのか」と考えた。薄くなった危機感と死への恐怖心が改めて蘇ってきたのだろう。




「まあ、貴方の尾を引き千切れる人間や妖なんて今のところ存在しないので大丈夫でしょう」




にっこりと語尾にでもついてそうな楽し気な声音に一気に脱力した。ついでに言えば尻尾も一気に下がった。








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bkm






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