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そして目を開ける。

ふわりと頬に落ちた何かを指で押さえて起き上がれば、それは淡い桃色をした桜の花びらだ。

よく見れば柔らかな土ではなく、石が敷き詰められたような道の上で寝ていたようで、体の節々が痛む、ソレを魔術を使うことで回復して、あたりを見回せば、果ての見えない長い階段が朱い鳥居の先で見えた




「じんじゃ…?」




長い階段であるはずなのに、なぜかその先が分かって口走る
つられるように立ち上がり、階段に足をかけた瞬間、円を描くように咲き乱れていた桜の花びらが私の視界を覆い始める




「無礼ですよ、ここは私の神域。下がりなさい」
「―――」
「…あら、あなた…」




耳元に聞こえてきた声は目を開けると前から聞こえてくる。
その声に私が正面に目をやれば青い服なのか巫女服なのかわからないものを身に纏うどこか見覚えのある、人ではない何か




「この世界ではない、神の加護を持つのですね、ふむ、いいでしょう。『どうぞ、いらっしゃいました』」




刹那

響くのは何百もの鈴が一斉に鳴り響いたかのような音

シャンシャンシャンシャン!!

そして桜並木に居たはずの私は彼女を上座とした居間へと通され、目の前で食事をつつかされていた。どういうことなの




「ふぅ、久々の客人なのでもてなしの仕方も分からずごめんなさい」
「あ、いえ、お気になさらず」
「といっても、お父様から生んでいただいてからこの時まで、客人のもてなしなどしたこともないのだけれど」




コロリと、まるで子猫が興味を強く示したかのような視線にさらされ居心地が悪い
なんと言えばいいんだろうか、完成された完璧な美しさをも感じさせる目の前の女性はどこか幼くて、まるで赤子のようだ。先程の威嚇もおなざりだった




「あの、貴方は…」
「私…?…、あぁ、そういえば人間は自分で己のことを名乗るのでしたね。…まあ、神であるこの私に先に名乗らせようとするその無礼さは目を閉じましょう。私の名前は天照。人々は私をこう呼びます――――――天照大御神、と」




日本最高神様かよっ!玉藻ちゃん予備軍かよっ!!

心の中で絶叫した私は悪くないはずだ






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bkm






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