優しい手 下(竹→←くく)




「!!お、起きたのか?」
「あ、あぁ…ここは…保健室か?」
体を起こそうとするハチを慌てて支える。まだ一人で十分に動ける体ではない。

ハチが起き上がると、バチッと目が合った。一瞬の静寂。それを、自分の声が遮る。

どうしても、伝えたかった。

「…ハチ、」
頬に手を伸ばした。傷のある箇所を避けて触れる。
「怖かった…俺の知らない所でハチが怪我をして、帰ってくるのが」

ゆっくりと頬を撫で、手を離す。
「俺の知らない所で傷付いて、知らない所で苦しんで、それで次は怪我じゃ済まなかったら…っ」

空に止まる自分の両手を、自分の顔へ持っていく。溢れ出した涙を見せたくないから。止めたいから。

「本当に、怖かった。分かってる、忍になる以上、こういうことはあるって。でも、怖かったんだ」

必死の思いで出した声はハチに届いたのか。それすらも分からず、必死に嗚咽をこらえていた。

しばらくすると、ごそっ、と布団が動く音がした。
「ハチ?」

「大丈夫だ」

そっ、とハチの手が頭に乗る。
「大丈夫だよ、兵助。確かに怪我をしない、とは言えない。でも、これだけは約束すっから。お前のいない所で死んだりしない。」

な?とこっちを向いて笑ったハチの顔は幸せそうだった。

何を根拠に、と言うと、さぁ?と笑われた。

わしゃわしゃと頭を撫でられる。

伸びた腕からちらりと見える包帯。
まだ痛いはずなのに無理をして。こっちの心配までして。

「…本当、ハチって馬鹿」

思わず笑ってしまった。けれどら呆れ、笑う以外にどんな選択肢があるのか。

幸せなこの瞬間。忘れることはないだろう。









Twitter診断より『大切な人に頭を撫でられて呆れながらバカという兵助』

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