優しい手 上(竹→←くく)
ハチが任務で怪我を負って帰ってきたと聞いたのは、数分前の話。
バタバタバタ、と駆ける自分の足音が聞こえるけれど、そんなものに構ってはいられない。
ダン、と大きな音を立てて扉をあけ、保健室へ入る。
「久々知、静かにしないと駄目だよ」
中に座っていた伊作先輩から注意を受けたが、
「…すみませんでした。あの、ハチ…竹谷の様子は…」
ハチの具合が心配で仕方が無い。
「余程心配だったみたいだね。大丈夫、少し怪我は酷かったけど、薬も塗ったし適切な処置も施したよ。あとは安静に、ね」
そう言うと先輩は優しく笑った。
しばらくハチの様子を見ていると、先生に呼ばれてるから、と言って先輩は保健室から出ていった。
二人だけの空間。
「…ハチ…」
改めてハチの顔を見る。
ハチは、ぐっすりと眠っていた。いつもとは変わらないその顔だけれど、首や腕に巻いた包帯、顔に残る擦り傷が現実を物語る。
そっと、手を伸ばした。触れるか触れないかの所でぴたりと止まる。
触っても平気だろうか。
傷は痛まないだろうか。眠りを妨げやしないだろうか…。
そのまま、考え込んでいると、
「兵助…?」
とハチの声がした。見ると、ハチの目がうっすらと開いていた。
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