// 月澱など要らない
貴方がやさしいのはきっとこのお腹のせいよね、と彼女は笑いました
慈愛に満ちた笑みでした
そうしてほんとうに、心の底から愛しそうに
子宮を撫でるのです
しかし僕は知っていました
そうやって僕のことを縛り付ける彼女が、あの腹の中に隠しているものがなんなのかを
彼女の言う愛の結晶なんかそこにはつまっていません
その中にはただ汚い臓腑がぎっしりと
詰め込まれているだけなのですから
彼女にはなにも宿ってなどいないのですから
必要のない月澱
月澱(つきよどみ)
2013-07-08-NETA