救える





「戦を、犠牲なしで終わらせる?」
「うん。
戦は、どう動いたって死者の出るものだよね。」
「ええ、そうです」


目を伏せたサーシャさん。



「だから、女神の力でこの聖戦を無血で終わらせる。
 だって、悲しいよ。
 限りある命を、こんなところで散らすなんて。」


「……」
「私がいればこの戦に勝てるってことは、その力だってあるはず。」
「それは…。」


「だからサーシャさん。
 力を貸してほしい。」



サーシャさんの手を、強く握る。
サーシャさんの眼は、微かに揺れていた。



「サナエさん…」
「よく分かんないけど、急にそうしたいと思ったんだよね。」



聖域を見て回って、色んなところを見た。
あんなに頑張ってた訓練生も、いつかは死んでしまうかもしれない。
案内してくれた童虎や、あんなに綺麗なアスミタさんが明日には、
数秒後にはいなくなるかもしれないなんて、嫌だ。



「もし、ここに来たことに意味があるのなら。
 なにかを成し遂げられる力を持っているのならば」




私が、ここでやらなければいけないことは、ただ一つ。




「戦を勝たせることではない。
 この戦を、止めることだと思う。」



平和な世界で生きてきた私に何が出来るかなんて、自分でもわからないけど。
それでも、何もせずにただ無為に時間を過ごすなんて耐えられない。
救えるかもしれないものをあきらめるなんてしたくない。





「サナエさん…。
 あなたは、強いのですね。
 戦を進め、誰かを犠牲にすることしかできない私と違い、あなたは、自ら進んでこの戦を止めようとする…。」
「…私は、強くなんてないよ」



むしろ、雑魚の部類だ。
だけど…



「救えるなら、救いたい」









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