サイズよりも大事なものがあると信じたい





「ぅッ…。」


眩しい。
明るすぎる太陽の日差しで目を覚ました。
薄く目を開けると、いつもであれば閉じられているはずのカーテンが開いている。



「カ・・・カーテン。」


カーテンを閉めようとした手が空をきる。



「あ…あれ?」



いつもであれば届く距離にあるカーテンが届かない。
目を擦ってはっきりとあたりを見渡すと、そこは見慣れぬ部屋だった。
一瞬戸惑ったが、昨日のことをはっきりと思いだす。
到底現実とは思えない、昨日の出来事を。


「…あぁ、そうか。」



あれは、夢じゃなかったのか。
むしろ夢だったといってくれた方がよっぽど幸せだった。



「あー、起きたくない…」


布団の上に再び倒れこんで現実から逃避する。
体が重いうえに、誰か会うのがひどく億劫だった。


「寝よ…。」


どかしてしまった布団を再びかけなおして、目を瞑る。
もう一度目が覚めたら元に戻っていてほしいな、なんて夢に逃げようとしたときだった。



「なに健康な子供が二度寝しようとしてるんじゃい!」
「ぅぎゃ!?」


布団をはがされ、冷気が体を覆う。
さ、寒い!?



「な、何事!?
 …って、童虎さん!?」


慌てて起き上がると、今までかけていた布団を手に持った童虎さんが呆れたようにベットの上の私を見降ろしていた。



「なにしてるんじゃ。
 今日は聖域を見て回るとあらかじめ言っておいたであろうが!」
「だ、だからって勝手にはいらないでくださいよ!」
「お前が何度呼びかけても起きないから悪いんじゃろう!」
「そういう問題!?」


確かに一度熟睡すると些細なことでは起きないが、だからと言って勝手に入ってくるのは問題だろう。
そう抗議するが、童虎さんはあまり堪えた様子は見えないので気にした私のほうがおかしいのかと思ってしまった。


「ホレ、着替えじゃ。」



投げ出されたのは、白いシンプルなドレスのようなものだ。
撫でてみると肌触りがとても良い。


「あ、ありがとう。」


今着てる学校の制服を脱ごうとしたが、童虎さんがいるから、脱げない。


「・・・あ、あの?」
「なんじゃ?」
「着替えられないのですが…。」


さりげなく、出ていってほしいという意思を伝えると童虎さんは一瞬考え込んだがすぐに思いだしたかのように手をたたいた。


「ああ、そういえばおぬし女じゃったの!
 胸が小さいから分からんかったわ!」



それを聞いた瞬間、自分の中で何かがきれる音がした気がする。



「最ッ低!!
 出てけーーーーー!!!」
「危ないのう!」



手近にあった花瓶や枕を投げつけ、童虎さんを追い出す。



「マジで最低だ、あの人…。」



ぼやきながら、昨日感じた頼りがいとかそういったものがすべて今の一件で帳消しにされた気がする。
ぶつぶつと文句を言いながら、渡された服を広げてみる。



「………」


着るか着ないか、とても悩んだ。
古代ギリシア風の古風なドレス。
確かにとても素敵だったが…私にはとても重要な問題があった。



「胸ないときついな、これは。」



胸元が大きく開いた服。
それを着るには勇気と、胸がないときれない。





「……」





無言で自分の胸元を見てから、
タンスの中にあった服に、ドレスをアレンジしてきた。




・・・胸が小さい、かぁ。








          

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