秘儀!型破り!


「…ぉぃ」













遠くで、誰かの声が聞こえる。
意識が、だんだん浮上してくる。












「ッう…。」



















薄眼で目を開けると、立派な麻呂眉がいきなり出てきた。












「サナエ様、大丈夫ですか?」










「し、シオンさ…」












「なにをやっておるんじゃ!お主はあああ!」











「童虎もいたんだ…。」






















シオンさんとあたしの間に割り込むように顔を近づけて叫ぶけど、
なんか微妙に頭痛いから叫ばないで欲しい。
てか、顔近いです。
鼻と鼻ぶつかりそうなんですけど。















「童虎、ちか…。」








「ああ、すまん。」











美形フェイスがスッと離れる。
その様子を見てたシオンさんの目が冷めてるのは童虎だけに向いてることを信じたい。












「教皇から、何をしでかすか分からないと訊いていましたが、
まさか本当にやるとは…。」












「…あたし、何かしましたか?」












「おぬしは立派なことをしたぞ。
まあ、無謀じゃったがな。」













豪快に笑っていう童虎とは反比例してシオンさんは冷たい。




















「笑いごとじゃない。
もし、冥界に連れてかれたりしてみろ。
もう二度とここには戻れなかったぞ。」













「まあのう。
倒れているサナエを見つけた時は流石に肝が冷えた。」











「…あ、そうか。」


















あたし、ハーデスと話したんだ。
といっても、話したのはほぼデメテルだけど。










「先ほどアテナから連絡がありました。
ハーデスの方から、“休戦協定を結びたい”とのことです。」










「・・・え?マジで?」













「本格的に始まってはなかったから両者ともに目立った被害も損害もなかったからな。
その協定を結ぶのに、めだったごたごたはないらしいぞ。」












「もっとも、協定を結んだところで両者のにらみ合いは収まらないでしょうが。」
















「でも、これで聖戦はひとまず無くなったんでしょ?」










「まあ、そういうことになるのう。」













「良かったぁ〜…。」


















ひとまず、聖戦はなくなったんだ…。
でも…。












「またいつ始まるか分からないんじゃ…。」






「問題はそこじゃな。」






「そこら辺は、アテナとハーデスの話しあいによりけり、ですね。」









「・・・そっかぁ。」






















…これ以上は、あたしがやることはないみたいだからいいけど、
もしも戦争がはじまった場合の事を考えなくちゃいけないなんて…。
















「なあに、安心しろ!
お前とデメテルがここまでこぎつけたんじゃ!
戦争が始まるなんて、万に一つもない!」










「…そう、だよね!」















自分と、この中にいる女神様を信じなきゃ何もはじまらないよね。



もし始まったら始まったで、あたしが止めればいい話しなんだし!
グダグダ考えるのはやめておこう!













「ッう…。」











「向こうも気がついたようだな。」












「あ。アローンくん!
居たんだ!!」






あたしとは少し離れた場所に寝かされてたアローン君がゆっくりと頭を上げてこっちを見た。






「サナエさん…。
・・・・この人たちは?」















金色の鎧を着た不審者に、明らかな警戒心を抱いた目で見つめるアローンくん。
そりゃ、そうだよね。
あたしもそうだったし…。






















「おぬしは、テンマの…。」






「あなたは、あの時の…。」










おぉ?
なんか知り合いっぽいぞ?











「…あれ?お二人さん、お知り合いで?」









「まあのう…。
こやつはテンマの親友だ。」












「テンマの?」












「ついでに言うと、アテナの兄だ。」











「サーシャの!?」











お兄ちゃん!?
嘘!?アテナのお兄ちゃんが、ハーデスだったの!?
何だその偶然!絶対狙っただろ!!












「…二人を知ってるんですか、サナエさ
ん。」









「うん。
サーシャとテンマはあたしの友達。
まさか、あの二人とそんなつながりがあったなんて…。」














そういえば、サーシャとテンマは妙に親しいけど、
あれは他意があったからじゃなくて親友の妹だからだったんだ…。














「…二人は、元気ですか?」










少しさみしそうにあたしに聞くアローンくん。




―そっか、親友と妹と離れ離れになってさみしいよね…。













「うん。
めっちゃくちゃ元気だよ!
テンマなんて早く聖闘士になろうとめっちゃくちゃ修行してんだよ!
サーシャだって、一生懸命アテナとしてお仕事してて、ぶっちゃけどっちが年上だかわかんない状態なんだよね!
だから、安心していいよ!」








「そう…。」













…あたしなんかが言っても説得力無いかな。
そんなあたしに出来ることって、


やっぱ型破りなことだよね!















「じゃあさ、色々とこっちが落ち着いたら二人をここに連れてくるよ!」











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