教皇の間





「でめ、」



ハッと目を開けると、純白の空間などではなく自分の部屋だった。




「…夢、か。」



夢にしては、妙に内容をはっきりと覚えている。
なんか、デメテルと話した気がする…。
ハーデスがどーとか…。



「って、そうだった!
 ハーデスを止めに行かないと何だった!」



勢いよくベットから起き上がり、急いで着替える。
遅刻しかけてよく早着替えしてたから、手慣れたものだった。



「セェーーージィーーーさぁああ――――ん!!!
 スゥワーーーーシャァ―ーーーー!!!」


教皇宮ではあり得ないくらい、私は大声で叫びながら走ってた。
すれ違った女官さんたちが何事かと目を剥いて私を見たが、それすらも気にならなかった



「セージさん!!
 サーシャ!!!」


「ど、どうしたのですか?」
「何故そんなに叫んでいるのです。」




教皇の間に、サーシャとセージさんは居た。
乱入してきた私にセージさんは驚いたような顔をしたが、すぐに取り直して
階段の下にいた金色の鎧を着た男性に手を向けた。


「サナエ様。
 黄金聖闘士が帰還しましたので挨拶を。」
「牡羊座のシオンでございます。」


金髪の男性は、片膝をついて私に自己紹介をする。
整った顔だが、何より目についたのは整えられた麻呂眉毛。
ここまできれいに整えられた麻呂眉毛を見るのは初めてだった。



「奥村サナエです。
 えっと、居候兼女神です。」
「サナエ様…」


私の自己紹介を聞いてため息とともに私を呼ぶセージさん。
どうやら、私の自己紹介に言葉をしなったらしい。
しかしながら私にそれ以上の自覚なんてないし。
てか、デメテルとは二回話したこと無いわ。

そこまで考えて、自分がここに来た理由を思いだした。
シオンさんに向いていた体をセージさんに向きなおした。


「セージさん!私、聖域の外に行ってくる!」

「却下です!
 あなたは懲りもせず!あれほど昨日…「違う!そうじゃない!!」…?」



私の切羽詰まってるであろう顔に、その場にいた三人が怪訝そうな顔をする。



「私が行くところに、ハーデスの形代がいる!」




「「「!」」」



驚愕の皆の顔。
その驚愕からいち早く立ち直ったセージさんが、すぐに詳細を聞く。


「どういう事なのですか?」

「デメテルに、夢で言われた。
 “森に大聖堂がある街”に、ハーデスの形代がいるって。」

「なんと、それは真ですか?」

「あたしはよく分かんないけど、デメテルが
 言ったことだから本当だと思う。」
 
「それは、急を要しますね」

「…あなたは、ハーデスの形代を見つけてどうするつもりなのですか?」



教皇としてのセージさんは、普段とは違う威厳に満ちていた。
・・・あ、やっぱ怖い。





「…ハーデスをその形代からひきはがす。」


「出来るのですか、そのようなことが」



サーシャの声が、不安そうだ。
それもそうか、もし形代がいるのならば、聖戦を止められない。
逆に形代からひきはがせば、聖戦を止めることだってできる。



「うん。デメテルがいれば、大丈夫!」
「それにお主がいれば問題ないじゃろう。」



「童虎!?」



いきなり会話に参加してきたのは、いつの間に入ってきたのか分からない童虎。
童虎は顎に手を当てた。



「森に大聖堂がある街…。
 わしに一つ、心当たりがある。」
「本当に!?」



予想外の言葉に私は明るくなる。
これで一番懸念していた場所探しをしなくてもいいかもしれない。



「ならば、サナエ様の護衛として童虎、シオン。
 お前たち二人を任命する。」

「「ハッ!」」




「それじゃ、早速いこう!」
「気をつけて下さい、サナエ」




心配そうな、サーシャの顔。
私はそんなサーシャを安心させるためにぐっと親指を立てて、元気良く笑った。





「だぁいじょうぶだって!
 お姉さんに任せなさい!」



サーシャの頭を撫でて、私は準備をするべく自室に戻った。









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