若さゆえの過ち



「脱出成功!」



急いで十二宮を駆け下りて、聖域を出る。
出るまでに焦ったような兵士さんたちを何度も見かけたが、隠れてやり過ごした。
セージさんにどこ行くか明確に教えたんだし、問題ないはずだ!
もしもに備えて、ちゃんと男装してあるし。


「あ…」



下りてからしばらくすると村が、見えた。





「ォオオ!!!」






それを見た瞬間、私のテンションはマックスだ。


「すっごおおおい!」



叫びながら村に向かうあたしは、傍から見ると変人なんだろうな、
と思いながらもテンションマックスで私は駆けて行った。




―――



「なんか、村を見てここまで感動するなんて予想外」



少しだけ落ち着いてきて、はやる気持ちを抑えながら村を見てまわる。
日本とは違う国の村の様子は、私の好奇心を刺激するものばかりだ。
文化水準は私がいた時代よりも前であるため何もかもが古い。
だが見たことがなかった私にとっては、逆に目新しいものばかりに私は目を輝かせた。


「す、ごぉい。」



陽気な呼びこの声。
様々な人の笑顔。
花や、食べ物などの色んな匂いがする。


「花はいりませんか?
 とてもいい匂いがするんです!」


私に話しかけてきたのは、可愛い系の女の子。
手には、いい匂いのする花を持っている。


「凄い綺麗!」
「お兄さん、花がお好きなんですか?」



お兄さんと言われて、今は男装してることに思いだす。
慌てて声を作る。


「え、あ、うん!
 好きなんだよ、花とかそういうの。
 ば、薔薇とか特に!」


特にアルバフィカが育てているあの毒の薔薇。
自分とアルバフィカしかめでられないけど、あたしはあの花が好きだ。



「薔薇ですか!
 それじゃあ、この薔薇なんてどうですか?」



差し出してくれたのは、真っ赤なバラ。
綺麗だけど、お金持ってないや。




「ゴメン、俺今お金持ってきてないんだ。」



“円”ならあるけど、明らかに時代も国も違うこの場で使えるとは思えない。
申し訳なく謝ると、少女も少し気落ちしたようだった。



「そうなんですか…。」



…ただの冷やかしかとか言われない、かな。
おろおろと目線を落とした時に気がついたのは、胸に刺してある薔薇。



「…ねえ、その薔薇って?」


美しい赤いバラからは、
微かにアルバフィカの小宇宙を感じる。



「ああ、これはある人にもらったんです。」


少し照れたように話す女の子に、私は思わずニヤニヤしてしまった。


「君の彼氏?もしくはナンパでもされた?
 アルバフィカもすみにおけないなー!
 こんな可愛い子ナンパするなんて…」


むしろナンパされてそうな人なのに。
…もしこれをアルバフィカ本人に言ったら絶対刺されるな、あたし。




「え!?アルバフィカ様を知ってるんですか!?」


はっと食いついてきた女の子に、狼狽してしまった。
そこで私も気が付いた。



「え、あ、あ!」



しまったぁああ!!
この子“ある人”とはいったけど、“アルバフィカ”とは言ってねえ!
や、やばいやばい!





「しかも、黄金聖闘士のアルバフィカ様を呼び捨て…。
 もしかして、聖域の方なのですか?」



しかも核心突かれた!



「そ、それは…」




いっても、いいのかな?
恐る恐る彼女の眼を見てみる。
真っ直ぐな瞳は、適当ないいわけでは納得しないだろう。
うん、これはひかないな。



「此処じゃ、都合悪いからさ。
 人のいない所でも、良いかな?」
「ええ!ぜひお願いします!」








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