世界の美しさ




「…私が?
  な、何でそういう結論に…。」

「あなた以外考えられない。
 あなたの手を伝って私に伝わったあの、熱く巨大な小宇宙。
 アレが私の目を治したとしか考えられない。」



光になれず、まだしっかりと見ることはできないが、
それでも鮮明に世界をみることができる。



「…すごいな、小宇宙って。」
「誰にでも出来ることではない。
 あなただからこそできることだ。」



感心したようにしきりに頷いていたサナエだったが、不意に暗い顔をして言葉を零した。




「…辛いですか?
 欲にまみれた世界が見えるって」



もしかしたら余計なことをしてしまったかもしれない。
暗にそう言っているように聞こえた。
恐らく、これはサナエ自身も狙って行ったことではなかったのだろう。
小宇宙のコントロールが効かず起こしてしまった事故のようなものだ。



「いや」



周りを見回す。
生き生きとした草木、潤う大地。
悠久の自然の美しさは、そこにはあふれていた。



「そんなことはない。この美しい世界を、見ることが出来た。
 それだけで、十分だ。」


「・・・そうですか。そうですよね!
 真っ暗闇よりも、光を見て生きる方が体にも心にもいいですよ!」



そう嬉しそうにほほ笑むサナエは、太陽の女神の様に光り輝いていた。


「アスミタさん!よかったですね!」
「…すべてはあなたのおかげだ。」


片膝をつき、サナエの手を取った。



「あ、アスミタさん!?」



当惑したサナエの声。
こういうことに慣れていないのが、バレバレだ。




「私はアテナの聖闘士だ。
 だが、同時に貴女を守ろう。貴女を害そうとする全てから」



手に唇をあてる。
それは自分なりの誓いだった。



「とてもありがたいっすけど、
 めっちゃくちゃ恥ずかしいんで、他の方法で誓って下さい…。」



サナエが顔を真っ赤に染めて、目を伏せる。
見てるだけで、頬が緩む。



「あぁ、そうだな」



「それじゃ、サーシャのとこに言って報告しに行きましょ!
 絶対喜びますよ!」
「ふむ、アテナが喜ぶほどのことか?」
「んなアホなこと言わないの!当たり前じゃないですか!
 仲間なんだから!」



ふわり、と風が体を撫でる。
花が揺れ、この葉が舞う。





―あぁ、私が生きている世界はこんなにも美しいのだな。


肉眼で見える世界の美しさ、
そしてその世界をくれたサナエに、感謝し、誓った。


―あなたは、私が絶対に守ってみせる。










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