諸行無常





「生きているから、言えることです。」




きっぱりとそう言い切る隣の座る少女。
言ってることは、何とも子供らしい。


「・・・それはそうだ。
だが、この世は無常だ。
生きていくという事は、苦しみでしかないのだ。」

「あなたは、分かっていない。」


はっきりと、言われたその一言。
今まで積み上げてきたものがゆらりと揺れた気がした。



「…なんだと?」

「生きることは、苦しいし、平等じゃない。
 現に今この瞬間も苦しんでいる人はたくさんいる。」



…そこまで分かっていて、なぜ否定をする。
何故?



「苦しいながらももがいて生きている人がいる。
 悲しみを飲みこんで生きていく人がいる。
 喜びを分かち合いながら生きている人だっている。
 喜びも、悲しみも、すべてひっくるめて生きることなんだって思う」

「……。」

「たしかにそれは一瞬のことだし、あとの世界にはそれは伝わらない。
 “諸行無常”ってやつだと思います。」

「形あるものは全て壊れる…。」

「そうですよね。
 だけど」



少女が私の手を握る。
繋がれた手から温かく力強い小宇宙が伝わってくる。



「何もかも崩れ去る前に、感じて欲しい。
 みえないことが いいなんていわないで。」




そのとき、閃光の様な小宇宙が体を突き抜けた。
はじけるような光が、瞼の裏で爆発する。







「ッう…。」
「アスミタさん!?
 どうしたんです!?アスミタさん!」



その衝撃に思わず倒れ込んだ。


「アスミタさん!?」



何が何だか、分からず、そのまま意識を手放した。









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