美しき薔薇の宿命



「この薔薇たちが」



アルバフィカさんが、美しい薔薇に触れる。
その立ち姿は、まるで神話に出てくる神様のみたいに美しかった。
だが、薔薇を見つめる瞳は悲しみそうに光る。



「母なる大地の女神を殺せるわけがない。」




「…。
 私に毒が効かない理由が、分かりました。」



だけど、説明がつかないことがある。




「人を簡単に殺せるという毒…。
 何故あなたは効かないのですか?」



それを聞いたとき、アルバフィカさんの眼が悲しく揺れたのが見えた。




「代々の魚座の聖闘士は、」



そう言葉をきると、
その目はどこか遠いところをみていた。




「猛毒を持つ魔宮薔薇に囲まれて生活しなければならない、
 だからこの薔薇の猛毒に耐えうる体質を作らなければならないのだ。」
「え、」


アルバフィカさんは手を胸に当てる。
微かに微笑んだ顔は誇っているようにも、自嘲しているようにも見えた。


「わたしははその完成形であり、今やその血までもが猛毒となっているのだ。」




…そんな、そんなことが



「…ごめんなさい、そんなことを無神経に聞いてしまいました」



あたしは頭を下げると、アルバフィカさんは溜めていた息を抜いた。



「いや、かまわない。
 それに…嬉しいのだ」
「?」



私の方を見て微笑んだアルバフィカさん。
その顔は表現で気ないほどに、美しかった。


「久しぶりに、ここで誰かと話すことが出来たから。」



安らかな頬笑みが、どこか痛々しく感じた。
なんとかして、あげたい。



「…だったら
 これからも話すって駄目ですか?」
「え?」




微笑んでくれたアルバフィカさんにこたえるために、笑ってみせる。



「私、こっちの知人が極端に少ないんですよ。
 だから、話し相手とか、お茶飲み仲間とか、愚痴仲間とか…。
 んー、要するに!」


アルバフィカさんの手を取った。
小さなかすり傷だらけの白い手は、戦士の手だった。



「友だちになりませんか?」







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