聖戦の条件




突然言われたことに頭が回らない。
いま、なんていった?


「ど……どういう……」


動揺する私にサーシャさんは言葉をつづけた。


「あなたの小宇宙は、いきなり降ってわいたかのようにあらわれたのです。」



嬉しそうに話すサーシャさん。
まるで、物語を話すかのように軽やかに言った。


「まるで、空から下りて来たように。
 離れていても、私にはそれが分かりました。
 だから童虎をあなたのもとに派遣させたのです。」
「ぁ…だから、童虎が私の事を助けてくれたの?」


タイミングのいい登場だとは思ったけど、まさかそんなこと言われてたなんて…。


「あなたの様な美しい小宇宙は、今まで感じたことがありません。
 もしも、同じ世界にいたならば私も、敵もこぞってあなたの事を探していたでしょう。」
「……」
「なのに、今日まであなたの事は気配すら感じなかった。
 だから私はあなたが違う世界・・・違う時間から来たのではないかと思ったのです。」
「…すごいね、その洞察力。
 あはは、そんなに私の小宇宙とやらは目立つんだね」


参ったなあ。と呟く私に、サーシャさんはアテナとして聞いた。



「この聖戦を終わらせるにはあなたの力が必要なのです。
 お願いです。力を貸して下さい。」




しばらくの間、私とサーシャさんの間に何とも言えない空気が流れる。
茶化すことすら不遜な空気。
唾液を飲みこんで喉を売るわせてから、私は口を開いた。



「…ねえ、サーシャさん」
「なんでしょう?」
「違う世界、違う時間から来たかもしれない人間を、信用なんて出来る?」



寸の間だけ、黙るサーシャさん。
しかし、力強く頷いた。




「ええ。私はあなたを信じます。」



一部の迷いもない言葉。
その言葉は確かに私の心に響いた。



「…ありがとう。
 サーシャさん、私思うんだ。」



手で目元を隠しながら、サーシャさんに聞いた。


「何でしょう?」
「聖戦ってことは、戦なんだよね。」



こくりと頷くサーシャさん。


「ええ、そうです。
 約二百年の間隔でおこる戦です。」
「それってさ、私が参加すれば勝てるってこと?」
「ええ、確実に」
「……もしも、もしもだよ?
 私がもし全力を尽くせばこの戦いを、これ以上、命を奪うこと無く終わらせることって出来るとおもう?」


「……え?」


サーシャさんの眼が、見開いた。
その目を見据えながら、もう一度いった。




「私は、この戦いを犠牲なく終わらせたい。
 だからこの戦に参戦する。
 それが私が戦に出る条件。」







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