限界点突破



荒れた荒野をひたすらに歩く。
照りつける灼熱の太陽はあたしたちの真上を陣取る。


「腹減った…。」
「おなかがすいた…。」


街を出てからもう何日たっただろうか。
何度か休みは挟んだがこの気候の辛さに気も体も休まらない。
さらには手持ちの食料がそこをついていたため腹を満たすことすらできない。

「……。」

光牙やユナが不平を漏らすが、あたしはお腹が減りすぎて喋る気にすらなれなかった。
やばい、これは餓死するコースかもしれない。

あ、いまアリアちゃんのおなかなった
くっそぉおお!顔赤くしてめっちゃかわいい!!!

…腹減った。



「腹減った…」


光牙がそうつぶやいたとき、前を歩いていた蒼摩が叫んだ。


「んなこと言われなくてもわかってるよ!
 もうすぐだから我慢しろよ!」
「そういう蒼摩だってさっきからもうすぐもうすぐって…
 いつになったらつくんだよ。」
「たく、お前らが腹減った腹減った言うから
 火の遺跡に行く前にわざわざ寄り道してやってんだからな!?
 分かってんのかよ!」

確かに蒼摩の言い分ももっともだ。
それを否定する気はない。
だけど


「蒼摩の言い分はわかったよ。
 確かに腹減ったって言ってんのはあたしらだよ。
 それと同時に、あたしがあんたら同様すっごいイライラしてんのはわかってるんだよね?」


パキッと指の関節を鳴らして脅すと、蒼摩は慌てて案内し始めた。


「なんか、ホタル…超恐え…。」


そりゃ、極限状態までお腹すいてるからね…。
流石のあたしもいらいらしますよ…!



「もう、限界…。」
「だからもうすぐだって!」
「もうすぐって…」
「どうすぐ…?」
「……うぅ。」


腹が、いい加減やばい…。


「ほら、ついたぜ!ここが俺の故郷だ!」
「!」

崖の下には、大きめな町。
あぁ…ようやく人里についたんだ…。

町につくと、さっきまでへばってた光牙は元気を取り戻して、
レストランに入ろうとする。

が、それを蒼摩が止める。



「待て待て!
 俺らにはそんな店に入る経済的余裕はねえんだぞ!?」
「確かに…それには一理あるなぁ」


前にユナが落としちゃったもんね。
まあ、あれから少しずつためてったけど…。

それでも、レストランに入ってる余裕なんてあるわけない。


「じゃあどこならいいんだよ!」
「安心しろ、ただでたらふく食わせてやっからよ!」
「え?」
「ほお?」

今の世知辛いご時世に、そんなところが?


―――



大通りを外れて小道をしばらく歩いてくと、町の雰囲気がどんどんと暗い感じへと変わる。
どっちかっていうと危ない雰囲気が漂う裏町に来た。


「どんどん、暗い感じな雰囲気になってきたわね。」
「あたしはきれいに着飾った町よりも、こういう感じな町のほうが好きだよ。
 昔、もっと危険地帯な感じな街の酒場によくいったし…。」
「…未成年が何で酒場なんかに?」

ユナの疑問はごもっともだ。
けれど昔は今ほど飲酒に厳しくなかったので、普通に酒場で酒を飲ませてくれた。
美味しいか美味しくないかは置いておいて、師匠と飲むのは楽しかったのを覚えている。


「師匠が生きてるうちにこういう味を知っとけって酒場には連れてってくれたの。」
「そうなの…。」
「なんか、ホタルの師匠って行けば聞くほど変な師匠だよな…。」
「変なって…失礼な。
 否定はしないけどね。」


なんて、緊迫感があるのかないのかよく分からない会話をしていると、
少し前にいかにも、という風な風体の男どもが道をふさいだ。


「!」


ユナと光牙が身構える。
あたしは、一般人に少し毛の生えた程度の輩にいちいち攻撃の態勢をとるなんて
無意味なので、あくまで自然体で立つ。
それに、相手からは殺気…というよりか、そういう気配を感じなかったから。

しばらく、前に立つ蒼摩と相手が睨み合っていたが、その相好が一気に崩れて蒼摩は悪人面の男たちとはしゃぎ合った。


「どういうことだ…?」
「知り合いなんじゃ・・・・ない?」


まあ、蒼摩自体もし生きる道がちがかったら、
あーいうのになってても不思議じゃないからね…。













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