崩れる、



本来であれば人が集まっているはずの闘技場に向かったはいいけど、
そこには誰もいなかった。

「遅かったか…。」

でも、ちゃんと光牙と蒼摩とユナと龍峰の小宇宙は感じられた。
とりあえず、今は一人で行動するよりも皆と合流しないと…。


「南冠座聖衣!」


きついのを承知で、聖衣を身にまとった。
これで、皆もあたしの小宇宙を感じやすくなったはず!


「いきますか!」


あたしは踵を返して、みんなの小宇宙が集まっている場所へと走った。




――――――――


「皆――!
無事ぃ―ー!?」


校舎の外でいつものメンバーが集合していた。
良かった…めだった怪我はあんまりないみたいだ。

「ホタル!」
「あなた、今までどこにいたの!?」
「ゴメン!今は言えないんだ…。
それより、なんで闇の力がパライストラを封じ込めてるの!?
あたしが此処にいない間に何があったの!?」
「今はここで悠長に話している暇はないだろう。」

…ん?
ナチュラルに会話に入り込んできたが、この長髪君は誰?

「どちらさまで?」
「人に尋ねるときはまずそちらから名乗るのが礼儀だろう。」

…こんなときに、めんどくさいやつだ。
でも、言い争ってる暇もないし、しょうがないからあたしから折れてやるよ!

「あたしは南冠座のホタル。
名乗ったんだし、そっちも名乗ってよ。」

簡潔にな。

「俺は狼座の栄斗。」
「栄斗・・・・知らないな」


こんな目立つ長髪だったら結構すぐ分かったと思うんだけど…。
見覚えはないということは、やはりあったことはないのだろう。


「俺もお前の事は知らん。
 俺が地下牢に閉じ込められている間にお前がパライストラに入ってきたんだろう。」
「成程ね。
 入れちがいってことか…。」


てか、地下牢にいたの?
そんで何で地下牢にいた輩が此処にいる訳?


「話しは後だ。
 それより今はここから抜け出そう。」
「まだいやがったのか。
 此処からは逃がさんぞ!」

「火星士!」

行く手を阻むように複数の火星士が現れた。
…まだこんなにいたのかよ。
こうなったら、冥界破で一気に。


「ぬおぉおおおお!」


そこまで考えたとき、野太い雄たけびが聞こえた。


「ぐはあ!?」


・・・・ぅわあ。
なんか熊みたいなのが火星士に突撃してきたぁー。
しかも、ふっとんだし。火星士の方が。


「檄先生!?」
「一瞬クマかと思ったよ!」

熊の正体は我らが教師、檄先生
流石に元聖闘士だった怪力は馬鹿にならない。


「栄斗!ホタル!」
「ホタルは知らねえけど、
 こいつはずっと牢に閉じ込められていたんだ!」

その言葉に安堵したような顔を見せたが、すぐに顔を引き締めた檄先生。

「そうだったか…。
 おまえたちは、いけえ!」
「!?」
「え…?」


な。なに考えてるの!?
一人で、しかも聖衣なしでこんなに大勢に勝てるわけないじゃん!


「いけえ!
 正しい者がいなくなれば世界が滅ぶ!
 お前らが、ここで学んだことを忘れずに力を合わせて未来を切り開くんだ!」


先生…。


「力を合わせて…」
「檄せんせぇ…」
「さあいけ!
 若き聖闘士たちよ!」


立ちはだかる檄先生に襲いかかる火星士。
その姿を見て先生に駆け寄ろうとする光牙の肩を掴む。

「先生!」
「何やってんだ光牙!」
「先生の思いを、無駄にしたいの!?」
「ッぐ…。」


悔しい気持ちはわかる。
だけど、今は先生の思いを無駄にするわけにはいかない!
涙をこらえて、あたし達は走りだした。

そして、先生のおかげで、なんとかパライストラの出口についたはいいんだけど…。


「この闇の小宇宙をどうすればッ…。」


通さないといわんばかりに、門の奥は闇の小宇宙で塞がれていた。
流石に逃さないってわけか…生半可な攻撃じゃ、どうにも打ち壊せそうにはないな…。
でも、あたしにはそんな攻撃力はないし・・・。


「檄先生がいったように、力を合わせようぜ!
 皆の小宇宙を一点にたたきつけようぜ!」


光牙の提案に、ハッとする。
確かに、皆の力を合わせれば何とかなるかもしれない。


「それ名案!
 早速やろうよ。」

光牙が差し出した拳に習い、皆も拳を差し出した。


「俺達は自分の力で道を切り開くんだからな!」
「自分の力で…」
「そうだな。」


皆が、一斉に小宇宙を高めた。
あたしも、一緒に自分が出せる全てを出した。




『いっけぇええええ!!!』






ドガァアアアアンッ



一か所に集中した小宇宙は、扉をぶち壊した。
だけど、外も外で闇に覆われて、一寸先も見えなかった。


「何も見えない!」
「どっちに行けばいいか…。」
「むやみにいくのは、危険すぎるね。」


どうするか…。


「俺に任せろ!
 はぁ!」

光牙の拳から、まばゆい光の線が出てきた。
それは、闇をわけてみちをつくった。


「光牙ハンパねえ!」
「光の道だわ!」
「光のペガサスか!」


光の属性はそんなことまで出来てしまうのか…。
なんかよく分からんけど、凄い!

「とにかく、行こう!」

光牙が作ってくれた道をあたし達は走った。
その途中、背後から大きな音が聞こえた。
その音に反応して振り返ると、パライストラが闇の小宇宙によって崩されて行く音だった。



「私達のパライストラが…。」


崩れてく…。
あそこに、残された人たちは…。


「皆…」
「先生…」
「あそこで皆と出会い、小宇宙を高め合った…」
「っく・・・」


マルス…此処まで人をコケにしやがって…。
アイツだけは、絶対冥界に送ってやる!

「俺は行くぜ」
「光牙…」


崩れてくパライストラではなく、しっかりと前を見据えて光牙はいった。


「失っても失っても…俺達は前に進むしかないんだ!」
「…そうだね。」


一度、うなづいてからあたし達はまた走り出した。
倒すべき敵を、脳裏に浮かべながら。








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