キャンプらしいよ! あたしたちは未開という言葉が似合うような森の中を歩かされていた。 どうして、こんなまだ太陽が昇ってすらない時間にキャンプなんだよ!!!と心の中で盛大に叫ぶ。 めっちゃくちゃ眠い…。 あ―――…死ぬ。 「んー! 外の空気はやっぱ気持ちいいな!」 光牙くん、君はお元気そうですね。 あたしは、もう死ぬ。 てか死にたい。 「空気なんてたいして変わんないよ…。 それよか、死ぬほど眠い…。 こんな時間に起きてるとか、マジで論外。」 「知らないってとっても幸せね。」 「はぁ…。」 んん? なんか、ユナと龍峰君のテンションが低い。 首をかしげるあたしと光牙に後ろを歩いていた蒼摩が教えてくれた。 「お前ら知らねえのかよ! このキャンプはめっちゃくちゃ厳しいって有名なんだぞ!?」 蒼磨の言葉にあたしは納得する。 なるほど。だから皆顔が暗いのか。 「なんだよ、ただのキャンプだろ? ビビりすぎだって!」 能天気発言の光牙だが、今回ばかりは同意だった。 厳しいことに恐れていたら何も始まらない。 「厳しくとも、乗り越えていくのが聖闘士だよー。 逃げ腰なのは、良くないよ。あぁ…眠い。」 「あくびしながら言ってるやつにはいわれたくねえな!」 …ばれたか。 だって、めんどくさいんだもん。 「ひひひ! 光牙、ホタル。 お前さんらはなーんもわかっていないざんす。 このキャンプは聖闘士も逃げ出す地獄のキャンプ・・・・略してヘルキャンプなんざんす」 市の言葉に眉をひそめる。 そのまえに、逃げ出すやつなんて聖闘士じゃないでしょ。 「市先輩。 人の心配は属性を使えるようになってから行って下さいね!」 「そうだ、よく言った光牙」 「お前にははいわれたくないざんす!」 「あ、ばれた。」 あたしも使えないしなぁー。 もうめんどくさいから考えるのやめたけど。 「ついたぞ。 ここがキャンプを行うコスモデルタだ。」 戦闘を歩いていた檄先生が立ち止まる。 見渡すとでかい山々が奥にそびえたつ深い森。 あー…こういうところでやるのかぁ。 なんか懐かしいけど、だるい。 「今回の訓練内容は、雲海の下に広がるコスモデルタを突破し、 あのデルタ山の山頂に明日の朝日が昇りきるまでにいくのがクリア条件だ。」 「思ったよりも普通じゃねえか。」 「もっと厳しいのかとおもった。」 案外普通の内容に若干張っていた緊張が抜ける。 それこそ、一週間積尸気サバイバルとか…。 うん、大嫌いな部類だよ。 思い出しただけで泣きたくなってきたわ。 しかしユナは厳しい顔を緩めなかった。 「この土地には様々な大自然の障害に加えてもう一つの特徴があるの。」 「…特徴?」 なに、それ? 「此処は、小宇宙喪失地帯なんだ。」 「小宇宙喪失? なんだそりゃ?」 「さあ?」 聞いたことない言葉だった。 でも文字通りなんじゃないかな? 「此処は小宇宙を使用すると激しく体力を消耗するんだ。」 「…それじゃあ、普段の様に聖衣や属性を使うと危ないってことか」 「成程。 それは厄介だね。」 小宇宙が使えないとなると制限されちゃうことも多いね。 それだと小宇宙を燃やして使う積尸気の技も使えないし…。 「すこしはこの訓練の厳しさが分かってきたようだな。 最後まで生き残りたくば、自分たちで精いっぱいの攻略法を考えろ。 しかも今回はただの訓練じゃないぞ。 セイントファイトの出場権をかけた選抜試験だ」 「…セイントファイト?」 ああ、そう言えばそんなこと言ってたね。 アテナと会えるんだっけな? 「そして、セイントファイトに優勝すると白銀聖闘士に昇格することができる。」 「おぉ。 それは大分お得だね。」 まさに一石二鳥。 白銀には全く興味ないけどな! ← → back 141/26 |