過去の戦い


人間が止まることを許さない神の通り道。
がれきが、チリになっていく。
大好きな師匠も、死の神の依代である肉体とともに塵とかした。
あたしは流れていく涙で視界をぼやけさせながら、タナトスを睨んだ。


「人間風情がッ!!
神である私に!」

心底忌々しいとばかりに吠える死の神の本体にあたしは組みついた。
高密度の神の小宇宙があたしの肉体を傷つけるが、
痛みなどまるで感じなかった。
流れる血を無視して死の神にあたしの小宇宙のすべてを流し込む。

「五月蠅い!
 マニゴルドの…師匠の敵討のためにも!!
 お前だけは!!!」
「ホタル!
やめろォオオ!!」

背後から、セージ様の悲痛な叫びが聞こえる。
そのことがぐっとあたしの心を締め付けた。
いまからすることは、この誰よりも優しく賢い教皇様を傷つけることになる。
だとしても、やめるわけにはいかなかった。


「セージ様!
 すみません!…だけどあたしは…」

そこまで言った時、あたしの小宇宙がつきた。
力の抜けた体が、前のめりになる。
体が、神の通り道の奥へと吸い込まれていくことに抵抗などできなかった。


「ホタルッ!!」



必死に手を伸ばすセージ様の姿が、視界の端に映る。
厳格な顔に、悲しみの表情が張り付いた姿を見るのは忍びなかった。


だけど、あたしは笑って見せた。
いつも通りの、ふざけた笑顔。

楽しかったあの頃の、思い出を脳裏によみがえらせながら。

「後は……よろしくお願いしますね。」




目に映ってたものが真っ黒になった。





さよなら、セージ様。
一足先に、向こうにいってます。
マニゴルドと一緒に、待ってますから。




死の間際、あたしは心の中でそう唱えた





伝わらない、最後の伝言












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