ばれてしまったこと



「…。」



白羊宮から金牛宮へ向かう階段の間。
貴鬼に聖衣を直してもらったあたしたちは階段を上っていた。


「ホタルさん。
どうしたの?顔色が悪いけれど…。」
「まさか怖気づいたのかー?」
「…まさか、そんなわけないじゃん。」

さっき言われた貴鬼の言葉。
どういう意味だったんだろうか?
あー、なんか気になってしょうがないなぁ。


「もう一回、白羊宮に戻ってみようかな…?」


「何言ってるの!
 早く光牙と合流しないと!」

「あ、いや、そうなんだけど…。」


貴鬼って人の言った言葉…。


『あなたに出会えてよかった』


・・・あれはどういう意味で言われたのだろう?
愛の告白ではない、確実に。
どちらかというと…安堵とかそういう系?
でもあたしあの人とあったことないしなぁ…。



「…ぁ。」



もしかして…羅鬼が?




「…うわ、面倒なことになった。」
「お前、さっきからなに一人でブツブツ言ってんだよ!」
「いや…知られたら死ぬほどめんどくさい相手に、知られちゃったかもしれないことに今気づいちゃって…。」


「はア?」



そうだよ…!そうだったよ!
あたし…そういえば羅鬼にシオンのことを話しちゃってた!?
あれはうっかりとかそういうのだったけど…もし羅鬼がシオンのことを師匠の貴鬼に話してたら…。


「…確実に、あたしのこと探りに来るだろ。」



死んだ師匠の師匠の名前を平然と知ってるやつがいたら、あたしだって確実に探る。
しかも過去の文献とかをあされば確実にあたしの名前がある。
シオンは結構その日にあったことを書き留めてたタイプだから…もしかしたらあたしに関することを書いて残してたかもしれない。

過去の文献だって書いたのは生き残ったシオンとか童虎なはずだからあたしに関しての記述なんて普通に残ってるって考えていいわけなんだし、
同じ星座で同じ名前でシオンのことを知ってるって考えたら…確実にあたしだってわかるはず。


例えそれがどんなに突拍子もないことでも、そこまで重なってしまえば現実だって信じるしかない。
大体、神なんてものが存在する世界だったらありえるって割り切っちゃえるし。



「ぅっわぁあ…」


もしかして、というか確実にばれた…。



「最悪…。」


・・・確実に、貴鬼はあたしにシオンのことを聞きに来るだろう。
はっきり言って面倒くさい。
瞬さんとかだったらへんに深堀してこないだろうけど、あんなこと言ってくるからには確実に貴鬼は深堀してくると思う。
うわぁ…めんどくさい。
この戦いが終わったらバッくれていいかな?



「でもなんで“出会えてよかった”?」


「…気味悪いな。」
「独り言で盛り上がるってそうとうだよな。」


「だまらっしゃい!」



あたしのテンションが一気に落ちたところで、長い階段に終わりが見えた。
金牛宮が、目の前にそびえたつ。










back
141/134


×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -