戦い方





「ホタル。
お前は何のために戦うのだ?
こんなに無駄にボロボロになって。」

「いきなり喧嘩売ってる?」


とある任務でボロボロにした聖衣を持ち込んだとき、脈絡なくシオンにそう言われた。
修復しすぎてとうとう頭おかしくなったか。


「いや、気になっただけだ。
 教皇様から聞いた今回の任務の内容でここまでボロボロになることなどないと思っていたからな。」
「無断で人の任務の内容セージ様に聞いてんじゃないわよ。
 積尸気に送っぞ」
「私から聞いたのではない。
 教皇様がわが師ハクレイに言っていたのを聞いたのだ。」
「それ、無断で聞いてるってことじゃないの?」
「聞こえたのだから、無断ではない」
「意味わからんわ」
「そんなことより、この損傷具合の話だ」
「勝手においておくなよ…」

よくわからない屁理屈をこねるシオンに渋い顔になる。
そりゃ、あの程度の任務でここまでボロボロになることなんてないけどさ。
なったもんはしょうがない!


「私には、お前が死にたがっているように見えるぞ。」
「勝手に人を死にたがり屋にするなよ。
 お前がそんなこと言ったのが師匠に知られたら殺される。」


修行や私生活において基本放任主義ぎみな師匠たちであるが、命に関することだけはかな――り厳しい。
それこそ、昔師匠との喧嘩の中で減らず口の一環で叩いた「死んでやる」という言葉は、師匠の触れてはいけない部分にがっつりと触れてしまい、「勝手に死なれるくらいなら俺が殺してやるよ」という言葉とともに…本気で殺されかけた。
セージ様とアルバフィカが師匠を止めてくれなければ、確実に死んでいたと思う。
・・・うわ、“死にたがり”なんて間違ったこと知られたら今度こそ問答無用で積尸気送りだな…。


「修復するとき、聖衣の記憶が見えた。
 任務の時のお前の姿は…率先して前へ行きそして傷つくのも厭わずに駆けていく…。
 ・・・何も知らないものがあれを見たらお前の方が悪だと人は思うだろうな。」
「師匠に似てあたしも悪人面なのは自覚してますよーだ。」

んベッと舌を出してふざけるが、シオンの表情は一向に晴れなかった。

「…シオン?」
「お前は、世界のために血を流すのか?
 いや、私が知る限りお前は世界どころか本当はアテナですらどうでもいいと思っているはずだ」
「ちょっと待て。
 あんた、本当にあたしにケンカ売ってるわけ?」

その言葉はさすがに聞き流せない。
いくら実力差があろうとも、聖闘士として確実に怒っていい言葉だ。
憤りかけたあたしだったが…あまりにも暗い顔をしたシオンに、言葉を飲んだ。


「違う。
 ・・・お前を見ていて不思議に思うのだ。
 どうしてお前が無駄に血を流してまで戦うのか。
 自らの命を削り戦うことが教皇様やマニゴルドのためなのか?」
「……。」


どうして?
って言われても…あたしが聖闘士だからとしか言えないんだけど。




「生きてる価値を、見出したいからじゃん?」











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