闇の遺跡



目を覚ますと、暗い世界が広がっていた。



「こ、こは…?」


足を浸す水が揺らぐ。
そこは、あたしの背丈以上の淡い水色の水晶そこかしこに立っている不思議な空間だった。


「なんなわけ?ここは…いったい…?」


先ほどまで雷の塔の上にいたはずだ。
さっきのわけわかんない小宇宙に飲み込まれたと思ったら…転移させられた?
…いったいどこなんだ。


「あーもう、光牙たち探さないといけないってのに…。
 出れないのかな、ここ。」


何気なく、水晶に触れる。
澄んだ青にあたしの姿が映る。


「…光牙、大丈夫かな?」


水晶に写ったあたしの姿が、ゆらりとぶれる。


「!?」


突然揺れた虚像に驚き、距離を取る。
気が付けば全ての水晶にはあたしの虚像が映し出されていた。


『ここは闇の遺跡…。
 己の罪と向き合う場所…。』



虚像は語り、纏っていた南冠座の聖衣は黒く染まる。
その姿は、まるで…


「冥衣…!?」



黒に染まる聖衣は、まるで冥界の輩がまとう冥衣のようだった。
あたしとうり二つの女は黒く染まった聖衣を纏い、笑っていた。



『この姿は、お前自身を映した姿…。
 死した身のお前にはお似合いだろう?』


にたりと、不気味に笑う黒いあたし。


「ふんっ…!
 例え死したとて、そんな穢れた鎧を身にまとうつもりはないね!」



そう言いながらも、あたしははっきり言って動揺を抑えられない。
一体…どうしてこうなったわけ?
何だってこんなそっくりさんとご対面なわけなのさ。



「闇の遺跡って言ってたよね…。
あたしに向き合うべき罪なんて特にないんだけど。」
『そうだと思っているのか?
 本当に?』
「逆に問うけど、
 罪を犯さず生きてきた聖人君主なんてこの世に何人いるわけ?
 それこそありえないさ。」


侮蔑を込めて笑うけど、影は表情を変えなかった。


『それと向き合うのが、この遺跡だ。』

影がゆらりと手を伸ばす。
それは水晶からスッと出て、あたしの前で形作った。


『お前の罪は…お前自身の弱さだ。』


実像を得た虚像はニタリと笑った。



「ッ!」





それは、誰にも触れられたくないあたしの傷だった。












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