激情




遠ざかる。
遠ざかる。
青い光が遠ざかる。

手を伸ばしても届かない。


『待って、置いていかないで…―――!』


光が闇に消える。
それの光景は、まるで・・・



―――――

ひゅ、と息を飲みこむ。
視界に映る汚れた天井が、ここがどこなのかわからなくする。

「げほ、げほっ!」

荒くなった呼吸を落ち着かせながら、頭を上げる。
あたりを見回せば薄汚れた部屋の一室。
並べられたベットには女の子が二人・・・ユナとアリアちゃんが横になっていた。

「…あぁ、そっか。昨日ってたしかおんなじ部屋で寝たんだっけ・・・」

床で眠ったせいか、体が少しだけ痛い。
窓を見ればまだ日が昇りきっておらず、中途半端な時間に起きてしまったようだった。
痛む頭を抑えながら、あたしは洗面台までのそのそ歩く。
鏡を自分の顔を見ると、随分と目つきが悪い。


「…最悪」


今日の夢…あんまり覚えてないけど、師匠たちが出てた気がする。
いや、本当にそんな感じがしただけだけど…。
とりあえず、良い夢ではなかったなぁ…。


「あ゛ー…。
 これから遺跡行くのに嫌な夢見ちゃったなあ…」


あたしはため息をついてから、景気づけに思いっきり顔を水の中に沈めた。
ごぽごぽとたまった水の中で息を吐く。
そのまま、空気とともに嫌なことも泡となって出てけばいいのに。







さて、朝は最高に機嫌が悪かったけど!
今日は予定通り火の遺跡へと向かいました。
向かったは、いいんだけど…。


「アッツ!?何此処!火山!?」
「ここが第三の遺跡…!」
「火山地帯か…。火の遺跡とはよくいったぜ。」
「アッツ!」


今だ溶岩が湧き出る危険な活火山。
その山頂に火の遺跡があるらしい。
こんなところに、こんなの建てたマルスの気がしれない…!
あほだ、絶対に。


「にしても、熱いなぁ…。」

こんなところにいて、熱くないのかな?
あそこに…。
火の遺跡にいる火星士は。

何の因縁があるかは知らないけど…。
出来れば、蒼摩とあの女火星士を合わせたくはないな。


「頭に血が上った奴のすることは、理解できないからねぇ…。」



特に、復讐なんて考えてる奴なんか・・・・特に。
なんて、考えていると相手も気が付いたのかいきなり小宇宙を高めた。


「ッあー…。空気読めよ、あいつ。」




こっちはどう蒼摩とあんたを合わせないか折角思案してたのに!
ほら、蒼摩の小宇宙まで高まった来ちゃったじゃんか…。



「蒼摩!」
「!?」
「一人でいっては危険だわ!」


聖衣を着て、周りの制止も聞かないで溶岩を上手く飛び越えて走っていく蒼摩。



「おうぞ! 」
「当たり前でしょ!」


馬鹿なこと、しないでくれるといいんだけど…!





―――


溶岩でせき止められた道を、ユナと光牙が開けさせる。
あたしは、アリアちゃんを担いで走っていた。


「熱くない?平気?」
「うん…。ホタルは?」
「あたしは平気。
 だって聖闘士だから!」


きつくないって言ったらウソにはなるけど、
死ぬほどつらいわけでもない。

それに、今は自分のことよりも…。



「あのバカ…変なことしないでよね!?」



光牙もあほだけど、あんたも十分あほだ!蒼摩!




―――――――――





「蒼摩!」


崖の下に、あのソニアとかいう女火星士と対峙する蒼摩がいた。
あたしは蒼摩を思いっきり罵る



「テンメェえええ!!!アホ蒼摩!勝手に突っ走んじゃねえよ!」


おかげで余計な手間がかかっただろうが!この野郎!



「怒りに身を任せるんじゃない!」
「正気を失った状態で突っかかったところで勝てる相手じゃないでしょうが!」



とか言っても…正気を失ってる奴に言葉で説き伏せるのは無謀だし…。
しゃあない、死なない程度に魂を爆発させて…


「思い出せ蒼摩!
 お前の強さの秘密は何だ!
 親父さんのここには何があった!?
 お前のここには今何がある!?」

光牙の叫びに蒼摩の怒りの小宇宙が揺らぐ。
どうやらあたしの介入など必要ないようだ。
やるだけ野暮って、ことか…。


「事情はよく分からないけど、あんたは何のために戦うの?
 それを、間違えたらあんたは一生後悔する。
 それだけは、言っておくからね。」


復讐のため、そんなののために戦ったってそれはただの妄執だ。
強さじゃないし、全てが終わった後に絶対後悔する。


「後悔だけは、してはならない…。」


耳にタコができるくらいに言われた言葉。
だから、あんたにも分けてあげる。


「!」


蒼摩の技が、あの女にクリーンヒットする。


「おのれ!」


そう吐き捨ててあの女は引いていった。
致命傷にはならないにしても、結構な痛手だろうな…。



「蒼摩!」
「蒼摩ー!」


あたしと光牙が蒼摩に駆け寄る。
あの女火星士をまだ追いかけようとする蒼摩を、光牙が首を振ってなだめる。


「蒼摩、火のコアを壊しておいで。」
「……ああ。」


アリアちゃんと蒼摩が火のコアを破壊する。
いつものごとく、あのクリスタルは出てきた。


「…帰ろうか。」


あたしは蒼摩の頭に手を置いてぐりぐりと撫でる。
蒼摩は何も言わずにそれを受けた。

偉そうにモノを言っていたけれど、あたしにだって蒼摩の気持ちがわかる。
だって…できることならあたしも復讐したいと思うから。












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