小さな余韻







そのままの流れで蒼摩を中心に裏町の道端で食事かいとなった。
柄の悪いお兄さんがパンのようなものに野菜を挟む。
出来上がったものを光牙に差し出した。


「はい!お待ちどう!」
「おお!うまそう!」
「…なあに、これ?」


見たことない食べ物を手に、観察する。
郷土料理…なのかな?


「タコスだよ。
 いいか、タコスってのはお好みでソースをつけて食うんだよ。
 ほら!」


蒼摩が光牙が手に持っているタコスとやらに何やら赤い液体を振りかける。
明らかに悪い顔をしている蒼摩に光牙は気が付いていないようだ。
……あー…。そんな勢いよく食べたら


「かっらああああ!!!!!!!!」


「馬鹿だ…。」


あんなニヤニヤされながら渡されたらもっと警戒するでしょうが。


「とまあ、こんな感じだ!
 ソースや唐辛子は辛いんで気を付けろよ!」
「あはは、蒼摩、最高!」
「てんめ…どわあ!」


抗議しようとした光牙が鍋を持ってきたおっちゃんにさえぎられる。
あーあ、まじどんまい。


「…蒼摩って、人気者なんだね。
 チャラいから人当たりがいいのかな?」
「あはは…。」


ユナの容赦ない考察に渇いた笑いしか出ない。
けどま、


「今日は騒ぐぞー!」


「おー!」



楽しそうに盛り上がる人々。
戦いとは全く無縁な、平和な一幕。
たまには、こういうのもいいかな?







夜になって、宴会がお開きになった後
あたしは部屋でユナとアリアちゃんと一緒に休んでた。
二人にベッドを譲って、あたしは一人で椅子の上に座る。


「本当にいいの?私代わるわよ?」
「うん、大丈夫!
 それに久しぶりのベットなんだし、ユナとアリアちゃんでゆっくり使いなよ。
 あたしは全然地べたで平気だし。」

布団さえくれれば、どこででも寝られるからね。

「それにしても、蒼摩って何してたのかしら?
 チンピラ?ストリートギャング?不良?それともマフィア?」
「ちょ、ユナさん〜〜〜!」

明らかに堅気じゃない職業のラインナップにゲラゲラと笑ってしまう。
確かに今日いた人々は明らかに怪しい人たちばっかりだった。

「ふふ…でも、みんな楽しそうだった…。」
「そうね。人望があることだけは確かね。
 ずっと前から、蒼摩はあんな感じだったのよね…。」


ふと、隣から誰かが出ていく気配がした。
足音と、小宇宙からしてたぶん蒼摩。


「人なんて、そう簡単には変われないよ。
 どんな出来事があっても、どんな思いしても・・・・
 本当の自分を変えることなんて、できやしないよ。」


遠い目をして言うと、ユナがフッと笑った。


「ホタルは、頭がいいのか悪いのかよく分からないわよね。
 いってることに本当に説得力があるから…。」
「えー?あたしそんなバカそうに見える?
 まあ、否定はしないけどねぇ。」
「そういう意味じゃないんだけど…。
 あなたは栄斗とも違う謎さがあるのよ。
 勿論、それがあなたの魅力でもあるんだけどね。」


謎な感じが、魅力ねえ…。
ただ単にあたしが、本心を見せるのが苦手なだけなんだけどねぇ。


「あんまそう思ったことはないんだけどねぇ。
 さて、そろそろ寝ようか。
 明日は火の遺跡に行くんだしさ!」
「そうね、おやすみ。」
「おや、すみ」



ベットに潜る二人の姿を見てから
あたしも「おやすみ」といって壁に寄りかかって目を瞑る。


今日は、良い夢が見れるといいな。













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