しんゆう



光牙の決意とアリアちゃんの小宇宙に反応して、
スターダストサンドが煌めく。

「これは…アテナ様の光にスターダストサンドが反応している…!?」
「!」


まるで天の川の中心にいる加の如く煌めくスターダストサンド。
なんて…神秘的な…
あまりの美しさに息を飲んで上を見あげた。


「弱いものを傷つけ、力だけにたより・・・!
 お前みたいなやつは、聖闘士とは言えねえ…!」
「!」


光牙が、ゆっくりと拳を握る。
赤い瞳がきらりと輝いた。


「お前は、俺が倒す!
 ホタルは…手を出すな!」
「光牙…分かった。」

あたしが素直に引き下がれば、番犬座はたかだかと嗤った。



「ふはは!お前みたいな虫けらが俺を倒すだと?」
「ホタルの強い意思と、アリアの羅鬼を守りたいという気持ちが俺に力をくれたんだ…!」
「立っているのがやっとの貴様に、力に劣るお前が私を倒そうというのか?」


光牙は、猟犬座のこと睨み付けながら
しっかりとした口調で叫んだ。


「確かにお前は強い…!
 だけど、聖闘士の本当の強さはみんなを守りたいっていう気持ちじゃないのか!?」
「ふははは!ならば!
 お前のその思いとやらが強いのか私の最終奥義で確かめてやろう!
 ヘーベル・ヘルフレア!」
「ペガサス 流星拳!」

番犬座とペガサス座。
二人の技が、ぶつかり合う。
あたしは羅鬼とアリアちゃんをかばうように抱きしめる。

最初は互いに拮抗していたが、だんだん光牙が押されてきた。


「ふははは!地獄の業火に焼き尽くされろ!」


勝ちを確信した番犬座の哂い声。
あいつの勝利なんて、誰も見たくない!


「光牙…!頑張って!」
「負けてんじゃねえよ…光牙!」


あたしと羅鬼の言葉に、答えるように、抱きしめるアリアちゃんの光がさらに増す。


「燃えろ…!俺の小宇宙!」



アリアちゃんの光の小宇宙に守られ、さらに小宇宙を高めた光牙。
勝負は、もう見えた。
光が更に輝きを増し、炎すらも凌駕した。

「な、なに…!?
 ぅわあああああああああ!!!!!!!!!」


光牙の、流星拳にふっとぶ駄犬。
あぁ、少しだけすっきりしたな…。


「…撃退成功…ってか?
 アリアちゃん、大丈夫?」
「うん…」


あたしはアリアちゃんに微笑みかける。
アリアちゃんも、微笑み返してくれた。




一部砕けてしまった聖衣を羅鬼が直す。
見習いとは思えないその手つきは羅鬼自身の才覚と師の教えの良さを示していた。


「おお!聖衣が治った!?」
「せめてもの御礼なのだ!」
「そっか、羅鬼は聖衣の修復士の弟子なんだっけ?」
「そう言ったではないか。」

蒼摩たちの聖衣を羅鬼が直す。
次世代の修復士は安泰なようだ。
聖衣を直す羅鬼の姿に、あの金髪の牡羊座の姿が重なる。

「ほーんと、懐かしいなぁ。
 あたし昔よく聖衣壊して殴られたっけ…?」

無茶して怒られるのは慣れていたが、シオンの怒り方は師匠とは違って怖かった。
どちらかと言えばセージ様よりの怒り方だった…。
今思いだしても身震いする。
とは言うもののなんだかんだでシオンは手は出さない。
手を出すのはハクレイ様の方だ。

「聖衣壊すほど無茶してたのかよ、お前。」
「まあね。
 昔はやんちゃだったってことだね。」

ほーんと、ハクレイの爺はすぐに手が出てくるんだから…。
良い思い出だけど…あの拳骨の痛みだけはいただけないな!


「シオンって人に殴られたのか?」
「え?違うよ。
 殴ってきたのは、ハクレイのじじ…ッ!?」


そこまでいったときに慌てて口を閉じた。
ま、不味い!あいつ教皇やってたんだっけ!?
みんな知ってるかな!?

「シオン…?
 どこかで聞いたことあるような…?」


優等生のユナが小首を傾げたから、あたしは慌ててごまかした。


「むッ!昔の幼馴染の名前だよ!
 そ、それよりさ!早くここから出ようか!?」


皆の背中を押しながら、あたしは心の中で自分で戒めた。
皆には、あたしが過去から来たことは言いたくないから気を付けないとな…。


「シオンとは、とても仲が良かったのだな!」
「!」


無邪気にそう言われて、あたしは少しどんな顔をしていいか悩んだ。
だけど、前に…ううん、昔にシオンや童虎と笑いあったような顔であたしは笑った。

「うん。
 最高の、戦友(しんゆう)だよ。」




――




「もう送っていかなくていいのか?」



洞窟から出ると、あたしたちは羅鬼と別れることになった。
まさかジャミールまでついてくわけにもいかないしね…。


「うん!
 悪いやつらは光牙たちがやっつけてくれたからな!」
「そっか!」
「元気でね」
「また会えるといいな!」
「また鷲にさらわれないようにね?」
「そんなことわかっているのだ!
 それに、きっとまた会えるのだ!そんな気がする!」


羅鬼はアリアちゃんに近づいて


「ありがとう!」

といった。
アリアちゃんも、微笑を浮かべてうなづいた。


「私も、羅鬼に会えてよかった。」


そんな心温まる光景をにこにこしながら見ていたら、
羅鬼はあたしのほうにも来た。


「何?
 あたしはお礼言われるようなことしてないよ?」
「そんなことないのだ!
 ホタルも守ってくれてありがとう!」
「…どうも。」


正面向かってお礼なんて言われなれてなくて、思わずぶっきらぼうになってしまった。


「ホタルも、師匠を大事にするんだぞ!」
「!」


無邪気な言葉に息を飲む。
師匠を、大事に……か。
もう、あたしの場合手遅れなんだけどね…。

だけど…。


「うん、わかった。」

大事にするよ。
あたしの記憶の中で、師匠たちは、ずっと生き続けているから…。











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