懐かしき声




その声に、あたしたちは一瞬で警戒態勢をとる。
アリアちゃんを守るように戦闘態勢になり、あたりを警戒する。
見れば出口を背に一人の白銀聖闘士が立っていた。


「白銀聖闘士…!?」
「誰もお前みたいなやつの迎えなんて頼んでねえよ!
 帰れこの駄犬が!」
「だから!お前は相手を挑発すんじゃねえよ!」


蒼摩に怒られたけど、そんなことは知るか!
…それになんとなく、こいつは好きになれない感じがする。
気配を察知できなかったということは、この男はかなりの使い手だ。

 
「こんなところにスターダストサンドが隠されていたとは…。
 子供、お前には修復士の居場所を吐いてもらうぞ。」


おびえる羅鬼が、アリアちゃんにしがみつく。
あたしはそんな二人をかばうように、背中に隠した。


「やっぱり羅鬼を狙う奴がいたのか!
 アリアと羅鬼は渡さねえぜ!」


皆が聖衣をまとうのと同時に、あたしも聖衣をまとう。
この子たちは、あたしが守る!


「南冠座聖衣!」


あたしは羅鬼とアリアちゃんをかばうように立って、相手を睨む。



「光牙!アリアちゃんたちのことはあたしに任せて!」
「ああ!任せた!」


こっちに来てから誰かを守るということが多くなった。
それは、案外悪い気はしなかったりする。
思わず漏れた笑いを見たアリアちゃんが不思議そうにあたしを見つめる。

「ホタル…?」
「ん?…ううん、なんでもないよ。」


あたしはにっこり笑って見せた。
冷めたわらいでも、ふざけた笑いでもない。
出来るだけ、羅鬼たちを安心させたいがための、あたしができる最高の笑顔。



「二人は、あたしが守るから。」



光牙たちが、番犬座に攻撃した。
すると、あいつは三つに分裂した。
…はい?


「きも!?」



きもい。なんだあれ!?きっしょ!
分裂とか…お前は単細胞生物か!?

なんて、冗談見たく言ってる暇はない。
三人の白銀聖闘士を同時に相手できるほどあたしも並外れて強いわけではない。
あっさり三人を叩きのめした白銀は、あたしたちのほうにやってきた。
サッと二人をさがらせて、あたしは一歩前に出た。


「お前はあいつらとは少し違うようだな。
 相手をするのは、少し手間がかかりそうだ。」
「ふん、あっそう。
 じゃあさっさと消え失せな、駄犬が。」


すると、あいつは分裂した二体を、あたしに差し向けた。


「おいおい…。二対一?
 青銅相手にここまでするとは…小物臭が隠しきれてませんよ?」
「黙れ子娘!」

あたしは羅鬼とアリアちゃんから離れる。
巻き添えをかけたくない!

「っはぁ!」


一瞬で間合いを詰めると、
回し蹴りで、一体を吹き飛ばす。
もう一体があたしに殴り掛かってきたので、その手を逆に利用して投げ飛ばす。

「らぁ!」


倒れこんだあいつの顔に蹴りをくらわせようとしたけど、紙一重でよけられた。
すると、いつの間にか復活したもう一体に羽交い締めされた。

「ッ!」


やばい。
そう思ったときには、みぞおちに拳が入った。


「ッガ…!?」


意識が、一瞬遠のく。
下がった頭に、今度は振り下ろされた拳がぶち当たる。

「ッ…!」


遠くから、あたしを呼ぶ声がする。
強い衝撃に、視界が遠のく。
やばい…意識が…。



―だから、お前はいつまでたっても馬鹿弟子なんだよ。



アリアちゃんとも、羅鬼とも、光牙の声とも違う。
懐かしくて、愛おしい
そんな声が、聞こえた気がした。
あたしは、それを聞いて反射的に目を見開いた。


「グゥ…!」



倒れた体を、無理やり起き上げる。


「こんなの…全然!痛くない!
 お前みたいなのが二人の攻撃なんかよりも…師匠の一発の蹴りのほうがもっと痛くて…もっと、もっと強かった!
 そんな蹴りを、10年間耐えてきたあたしを、この程度で倒せると思うんじゃねえよ!」

そうだ。あたしは黄金聖闘士であった師匠の弟子なんだ。
こんなところで、こんなやつにやられるほど弱くなんてない!


「小娘が…!
 貴様から先に片付けてくれる!」
「ッ来るなら来い!積尸気…冥界…「待て…」!」


あたしが技を繰り出す前に、光牙があたしのことを止めた。


「光牙…?」
「あいつの相手は…俺だ!」


光牙が決意を持ってケルベロス座を睨む。
それと同時に、あたり一帯が光輝いた。









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