スターダスト レボリューション!




川で遊び終わって、あたしとユナはアリアちゃんと羅鬼のもとにいった。
若干服が濡れたが子の乾燥して暑い気候であれば歩いているうちに渇くだろう。


「あら、随分楽しそうね。」
「君ら仲良くなるの早いねぇ…。」


川辺で話しこんでいた二人に声をかける。
人見知りの気があるアリアちゃんにしては、ずいぶんと早く打ち解けたらしい。
いい傾向だ。


「ユナ!ホタル!」


もう少し休憩時間を取ってあげたいところだが、これ以上は遅くなってしまう。


「そろそろ行きましょう。」


アリアちゃんの手を取って、あたしたちは歩き始めた。
あーぁ、久しぶりに童心に帰って遊んだなぁ。




――




「貴鬼って人は、やっぱりジャミールの民なんだよね?」



羅鬼と二人で後ろを歩いているときにあたしはぽつりと聞いた。
どうしても、羅鬼には確認しておかなけれないけないことだった。


「どうしてホタルはジャミールのことを知っているのだ?」

やはり推察は当たっていたらしい。
驚いた顔をした羅鬼があたしを見あげた。


「昔、知り合いがそこに住んでたんだよね。
 もう死んじゃったらしいけど」


嘘をついても仕方がないので、素直に答える。
ジャミールはセージ様とハクレイ様そしてシオンの故郷だった。


「ジャミールに?
 じゃあ、ムウって人か?」
「ムウ?ううん、違うよ。」

知らない名前に首を振る。
もしかしたらムウって人が前聖戦の修復士なのかもしれない。


「じゃあ、誰なのだ?」
「…シオンって人。
 あたしの、戦友(とも)かな?
 羅鬼とは違って、もっと偉そうでかわいげのない奴だったよ。」

そう。真面目で冗談が通じない堅物だった。
セージ様の又弟子だったあたしは修行のため、ジャミールを訪れていたためシオンとはマニゴルドの次に交流のある黄金聖闘士だった。


「シオン…。
 どっかで聞いたことがあるような…。」
「あはは、覚えてないなら思い出さなくていいよ。
 あたしのつまらない戯言にわざわざ頭なんて使わないでよ」

知っていたらいいな、程度で聞いたのだから知らないならそれでいい。
そう思って話を切りあげようとした。


「思い出につまらないも何もないのだ!」


綺麗に澄んだ目に見詰められながら言われたその言葉。
その言葉に、ずきんと胸が痛くなった。


「それも、そうだね…。」


否定することもできず、羅鬼の言葉を肯定する。
これ以上何を話していいかわからず、無言で歩いていると羅鬼が不意に話す。


「ホタルは、アリアともユナとも違う感じなのだ。」
「そうかな?」
「うん。
 ホタルはちょっと冷たい感じなのだ。」
「あ、それひどい。」


冷たい感じって…。
分かっているとはいえ、真正面から言われると…。
地味にショックを受けていると、羅鬼が慌てて取り繕う。


「別に悪い意味じゃないのだ!
 何というか…すこし、貴鬼様に似ている感じなのだ!」
「え?」


羅鬼のお師匠に?


「優しくて、胸に秘めた思いは誰よりもあったかくて…。
 あ、貴鬼様はもっと優しいし、かっこいいけど!」

顔を赤らめて嬉しそうに話す羅鬼の様子は、本当にその貴鬼という師匠が大好きであることを示していた。
あまりに素直なその様子に、笑いが漏れる。


「あはは。やっぱりお師匠様はいちばんだよねぇ。」


あたしは羅鬼の頭をなでる。
師匠も、こんな温かい思いであたしの頭をなでていたのだろうか?
もう聞くことが出来ない疑問を浮かべながら、先達から後輩へアドバイスを送る。




「羅鬼、お師匠を大事にしなよ?」




分かっているつもりでも、亡くなった後で気が付く存在の大きさ。
自分なんかよりも何倍も大きい、背中。
それらは、本当に手が届かなくなってから気が付くんだ。
羅鬼には、できるだけそんな思いはしてほしくない。


「当たり前なのだ!」



無邪気に笑う羅鬼。
そんな思い、気づいてくれるかな?






―――


大きな滝がある場所までついたとき、羅鬼が降りかえる。
どうやらここが目的地らしい。


「ここまでくればもうすぐなのだ。
もう一人でも平気だぞ?」
「何だよ、ここまで来たら最後まで付き合わせろよ。」

「えへ!
そうか、しょうがないなぁ!」


光牙の言葉を嬉しそうに答えながら、羅鬼が案内してくれたのは、大きな滝の横道。
うわ、結構デカいな。


「みんなー!どうしのだー?こっちだぞー!」

あたしたちは滝の隣の小道を抜けて、滝の裏側へと入っていく。
しばらく歩いていくと、岩が道をふさいでいた。


「あれ、行き止まりだぞ?」
「これでいいのだ。
 これは貴鬼様がつくったテレキネシスでしか開かない仕掛けなのだ。」


羅鬼が岩をどかせると、水晶のようなものがたくさん出ている神秘的な空間が出てきた。
キラキラと煌めく洞窟の内部は、まるで満天の星空の中にいるように錯覚するほど幻想的な光景だった。

「わあ…きれい!」
「これが全部スターダストサンドかよ…。」
「これを持って帰れば私の用事は終わりなのだぁ!」


羅鬼は、袋にスターダストサンドを掬っていれる。
んー…。きれい!


「青の、空間かぁ…。」
「星が降って来るみたい…!」
「きれい…!」


なるほど…。
だからスターダストサンド。
たしかに、これはスターダスト…流れ星だね。


「よし!もう十分なのだ!」


小袋いっぱいにスターダストサンドを詰めた羅鬼が合図を送る。
要件が終わったならさっさと出ることにこしたことはない。


「そうか、じゃあ戻るか」
「そうだね」


あたしたちがほのぼのと会話をしていた。
その時



「アテナ様。
 地獄の番犬座、ケルベロスのドーレが迎えに参りました」



低い男の声が響いた。













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