羅鬼といっしょっ!




「悪かったなペガサス!
 私は羅鬼!
 大事な用の途中なのでお前が悪いやつだと勘違いしてしまったのだ。許してくれ!」


元気良く挨拶する少女は羅鬼と名乗った。
確かに大事な用の途中に知らない人間から声をかけられたら不審に思うのは当然だ。

「いやいや、誰だって後ろから追いかけられれば不審者だと思うのは当然だよ。
 あたしだったら問答無用で回し蹴り食らわせてるから!」
「お前、それ全然フォローになってねえぜ?」
「え、そう?」

蒼摩のツッコミに不服を漏らす。
回し蹴りをくらわすかは別として、誰だってそう思うでしょ。

「さっきのテレ何とかといい…お前はいったい何者なんだ?」
「テレキネシスだよ。
 ちゃんと覚えときなさい、お馬鹿!」
「う、うるせえよ!」
「聖闘士のことも知ってるしな」
「それに、こんなところで用事って?」


皆で矢継ぎ早に質問をすると、羅鬼はつんっとした態度でごまかそうとした。


「それは秘密なのだ!」

目を瞑ってそっぽ向く少女の顔を凝視する。
幼いが愛らしい顔だちの中で目を引く麻呂眉毛。
さっきから気になっていたが、この子の麻呂眉毛…まさか…いや、でも…うん…。


「ねえ、一緒に行きましょう?」



思わず考え込むあたしに気が付いていないユナが、羅鬼にそう言うと羅鬼は一瞬キラキラと目を輝かせた。
しかし何かを思い出したようにハッとすると、勢いよく首を振った。


「え!・・・・ダメダメ!
 これは私一人でやると決めたのだ!じゃあな!」


さっそうと走っていく羅鬼。
幼いながらも身軽な動きでぴょんぴょんと岩を上っていく。
やはりただの少女ではないらしい。


「おいおい、大丈夫なのか?」
「あの子・・・悪いやつって」

「うーん…。」


聖闘士知ってて悪いやつなんて大方見当はつくから別にいいけど、
それよりも、あの眉毛…まさか…




――――


やはり不安になったあたしたちは羅鬼の後を追う。
すると崖の途中で大鷲に連れてかれそうになってる羅鬼を見つけた。
すぐに光牙が拳サイズの石を投げて撃退する。
やっぱり、いくらテレキネシスつかえてもまだまだ子供だなぁ…。


「よ、またあったな!」
「怪我はないかい?お嬢ちゃん。」


冗談めかして、きざっぽく言ってみる。
すると蒼摩から少し変な顔されたので、くるぶしを蹴った。

「いってえ!」
「大丈夫だった?」

悲鳴を上げる蒼摩を無視して羅鬼に声をかけると、不安が落ち着いたのかむっとした顔であたしたちを睨んだ。


「まさか、私を心配してついてきたのではないだろうな!
 私はもう子供ではないのだから、用事くらい一人でこなせるのだ!」

子供特有の「私は子供じゃないから一人で出来るもん!」といわんばかりの羅鬼の態度にユナが必死にごまかす。

「違うのよ、私たち、貴女と行く方向が同じなのよ。」
「ああ、だから一緒に行こうぜ?」
「旅は道連れ世は情けっていうでしょ?」

皆で説得すると、羅鬼も納得したのか嬉しそうな顔になった。


「そうなのか!…ぁ、そ、そうなのか。じゃあ仕方ないな。」


子供だけど、ちょっとだけ背伸びしてる感じがすごい可愛くて、
なんかちょっとこう、心に来るものがある。
うん、あいつとは…シオンなんかとは大違いだ!








「あははは!私のほうが早いぞぉ!」
「ははっ!待ってよー!」



岩と岩の間の道で羅鬼ちゃんとあたしが追いかけっこをする。
無邪気な様子で追いかけっこに興じる羅鬼ちゃんはとても愛らしい。


「なあ、羅鬼。
 お前のお師匠様って何やってる人だ?」

光牙がずっと気になっていたであろうことを羅鬼ちゃんに聞いた。
すると羅鬼ちゃんは立ち止まり、あたしたちのほうを向いて誇らしげに小さな胸を張った。


「ふっふっふっ!驚くなよ!!
 私のお師匠様は聖衣修復することができる最後の修復士・貴鬼様だあ!」


羅鬼ちゃんの答えに納得する。
やっぱり、ジャミールの子かぁ。
聖衣の修復士・・・。
シオンや、ハクレイ様と同じ…


「何、聖衣の修復士貴鬼だって!?」
「知ってるのか?」
「パライストラで聞いたことがあるわ。
 聖衣を直せるのは、もうその人しかしないって…」
「そっか…。
 もう、その人しかいないんだ…。」


元から、聖衣を治せる人なんて少なかったし…。
修復士自体も聖闘士だから、命を落とす可能性も高い。
あれから、200年もたってしまえば、今一人しかいないのだって頷けてしまう…。


「私の用事は、その貴鬼様がお使いになるスターダストサンドを取りに行くことなのだ!」
「スターダストサンド…かぁ。」

なんか、昔シオンが言っていたような言ってなかったような…。
あんま修復に関してはよく分からないなぁ。


「スターダストサンドっていやぁ、
 聖衣を治すのに必要な貴重な鉱石だよな。」
「でも…なんでそんなものを羅鬼一人で取りにいってるんだ?」
「そうそう、聖衣を修復するんだったら強いはずでしょ?」

それこそ、シオンやハクレイ様くらいに。

「お師匠様は今、悪いやつらに見つからないように身を隠していらっしゃるからな。
 私がスターダストサンドを取りに行かなけれならないのだ!」


えっへん、とでも言いそうなくらい胸を張る羅鬼ちゃん。
あまりに愛らしい姿にきゅん、と胸が高鳴る。
鶴座の白銀聖闘士・ユズリハを思い出す!可愛い!


「悪いやつって?」
「んー、お師匠様は確か、マルスの手下どもと言っていたなぁ。」

『マルス!?』


全員の声がはもる。
やっぱり、あいつの手下どもか…。
そりゃ、聖衣を治すことができる人間がいればその人を押さえたくもなるよね。










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