念動力!



海を渡り、いくつもの山を越え、やってきたのはむき出しの岩山がいくつもそびえたつ地帯。
砂漠とは違う色彩のなさは、ある意味壮観だった。



「ほんとすっげえ場所だよなあ…。
どこまで行っても岩ばっかりだぜ。」
「面白みもなんもない景色だねぇ…。」


人の気配が薄い岩山地帯。
これはこれで面白いのかもしれないけれど、変わらない景色は歩いていてつまらないものだ。


「いいじゃねえか、大自然って感じでさ。
 なあ、アリア。」
「火の遺跡まではまだありそうか?」


光牙の質問にうなずくアリアちゃん。
うーん、まだまだあるのかぁ…。
先の長さに思わずげっそりしてしまったのは悪くないだろう。

「そういや、栄斗は?」

いつの間にか消えてしまった自称忍者に、光牙が今更気が付く。

「あいつ、気が付いたらいねえよなぁ…。」
「彼は一匹狼なのよ。」
「狼座なだけにねぇ…」

ほーんと、あいつ何考えてるのかわかんないよなあ。
まあ、あたしが言えた義理じゃないんだけどねぇ…。
そんなことを話しながら岩山の上を歩いていると、光牙が何かに気が付いた。


「ん…?
 子供じゃねえか、どうしてこんなところを一人であぶねえだろ!」
「え?」


何かに気が付いたらしい光牙は、
崖を滑り降りて、ソレを目指して走って行ってしまった。
光画が向かっている先を見ると、たしかに小さな女の子が歩いていた。


「おい!
 たく…。」
「あーあ、思いついたら即行動だねぇ…。」


相変わらず、直線的というか、馬鹿っていうか…。
小さい女の子を追いかける光牙のあとを追いかけながら
そんなことを思っていると、女の子の周囲の石が宙に浮いた。
その浮いた石は、光牙の顔面にぶち当たった。


「今の、テレキネシス?!」
「へぇ。あんな小さい子まで使えるんだ」

光牙が倒れたことよりも、あんな小さい女の子がテレキネシスを使ったことに関して純粋に感心してしまった。
すごいなぁ。才能あるってことなんだねぇ。



「いってェ…なんだよそれ」


光牙の無知さに思わず凝視してしまう。
あんた、知らないの?


「念力でモノを動かしたりする能力よ。」
「例えば、こんな風にね」


あたしが手ごろな石を三、四個浮かす。
するとみんなからは驚いたような顔をされた。


「ホタル…あなたも使えるの?」
「お師匠に教えてもらったんだよね。
 といっても、才能が微妙な所為で実戦には全く使えないレベルだけど」



少し力を加えて、石をバラバラにする。
才能がないわけではないから使えないこともない。
小さなものを少しだけ浮かせることができる程度のテレキネシスの才能はあるが実戦で使うには弱過ぎる上、集中しないと出来ないため全く使用したことがない。
せいぜい集中力を高めるためのお遊び程度だ。


「あたしのことより、その子の誤解を解くほうが先じゃない?」
「あ…そうだったわ!
 私たち、怪しいものじゃないの!」


ユナさん、そう言うのを自分から言う奴ほど怪しい人間っていないんですよ…。
なんて思ってると、少女の視線が光牙の胸元で光るクロストーンにくぎ付けになる。


「それは、クロストーン…。
 お前たち聖闘士なのか?」


ん?








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