バイト決定!





ご老人に連れてこられたのは、大きな家。
意味が分からず扉の上にかけられた看板を見つめるあたしたちに、ご老人はいい笑顔で告げた。



「バイトをしてくれ」
「バイトォ!?」

「ばいと?」


「そうだよ。ここは俺のペンション。パウロ&アンだ」


知らない言葉に首をかしげる。
隣にいた光牙も知らなかったのか、あたしの反対側にいた蒼摩に尋ねる。

「なんだ、ペンションって。」
「寝泊まりするところだ。
 ま、アットホームなホテルってところかな?」
「宿ってこと?」
「そーゆうことだ!」


ふうん…。
それでなにすりゃいいわけ?


「あんた、帰ってきたのかい?」


扉から出てきたのは、ご老人と同じくらいの年配の女性。
感じからしてこのご老人の奥方だろうと推察した。



「おお、ばあさん。
 新しいバイトを連れてきたぞ。」
 
読み通りご老人の奥方だったようだが、奥方はあたしたちをまるで品定めするような目で見る。


「大丈夫かね、こんな若い子で。
 あたしゃあしらないよ!どうなっても!」


明らかにあたしたちを信頼していない言葉にちょっとだけカチンと来た。
確かに若いが、その言い方はないだろう。


「ははは、普段はばあさんと二人で何とかなってんだが、客が多くて猫の手でも借りたくて…。
 あんたら手伝ってくれ。」


ご老人の言葉にあたしたちは困ってしまう。
一応任務中なのだが、ここで働くのは問題ないのだろうか?
 

「で・・・でも…聖闘士でバイトって、アリなの?」

ユナも同じことを思ったのか同じく困った顔で皆を見回す。
確かに、これは判断に困ってしまうな。

「少なくても、あたしはしてる奴とか知らないけど。
 …一応、いま最重要任務の途中だしなァ」

うーん、と頭を抱えるあたしたちだったが、
バシッと蒼摩が手をたたく。
その目は決意に燃えていた。

「きっとゆるされる!
 これは、アテナを救うためのバイトなんだ!」


確かに、ここで働かないと先へは進むことはできない。
ある意味蒼摩の決断は最善策のように思えるが…。


「…物は言いようだねぇ」


…聖闘士って、副職ありなのかなぁ?
まあ、これも社会体験ってことで!


「しっかり働いてくれたら、船は出すから。頼んだよ〜」


ご老人の言葉に、あたしたちは頷く。
これ以外に道はないのだ、頑張ろう!












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