雪の中の約束 「ッ!?」 あたし達は町についた…。 だけど、それは町ではなく、町の残骸だった…。 「これがユナの、町!?」 ショックのあまり、アリアちゃんがその場に膝から落ちてしまった。 「アリアちゃん!」 「アリア…。」 アリアちゃんを支えて立ち上がらせようとしたが、ショックからかまだ足元に力が入っておらず立ち上がることが出来なかった。 「どうして、こんな…。」 「ひどい…。」 まさか、これも…。 「戦争のせいよ。」 「え・・・?」 トラックの運転手から話を聞いてきたらしいユナが戻ってきた。 その顔は、厳しかった。 「七年前、私が旅だったすぐあとに、ここも戦場になったらしいわ。」 …やっぱり、ここも戦争で。 「ここから東に二十キロいったところにはまだ人がいるみたい。 そちらにいきましょう。」 そこまでいったとき、アリアちゃんがしゃがみこんでいるのに気がついた。 「だいじょうぶ、アリア? アリアのためにも、早く行きましょう。」 「ああ…。 そうしたいところなんだけどな。」 「向こうさんは、まってくれないみたいですよ?」 あたしの言葉と同時に、風が吹雪いてきた。 くそ、また敵か…。 「小宇宙が一つ。」 「油断するな。」 「するわけないでしょ。」 この小宇宙、白銀レベルだ…。 「なあに!敵が一人ならなんとかなる!」 「そうだね。早いとこ、聖衣をまとって…。」 「まって。」 あたしが聖衣を着ようとした時、ユナがそれを止めた。 「え…?」 「ここは私に任せて先に行って。」 「なんだって!?」 ユナ…何か考えがあるの? 「このあたりの事なら、私が一番知ってる。誰よりも有利に戦えるわ。」 「だからってユナを一人・・・!」 「私なら平気! 地の利を生かして、逃げ切って見せるから…。 それより、多分白銀聖闘士が来る。 アリアを守って。 それがいま、一番重要なことよ。」 ユナの強い光を宿した瞳…。 そんな目をまえに、これ以上何を言っても無駄だ。 「おっけーだよ。」 「わかった。」 「無理するなよ。 ほんの少しだけ、時間を稼いでくれ。」 「ユナ…」 心配そうなアリアちゃんの目。 そんなアリアちゃんを、光牙が背負う。 蒼摩と光牙とアリアちゃんが先に行く。 あたしはすこしだけ、立ち止まった。 「ユナ。」 「なに?」 あたしは、振り返らずに言葉だけ言う。 「…死ぬな、とは言わないけど。 アリアちゃんを悲しませるようなことにはならないでね? あの子、あなたになついてるんだから。」 「ホタル…。」 「じゃ、またあとでね。」 あたしは光牙達を追いかけて、走って行った。 ユナを信じて、振り返らずに。 ← → back 141/59 |