雪の中の話し




あたりはすっかり吹雪いてきた。
流石に吹雪の中、先には進めないのであたし達は洞窟で避難することにしたんだけど…。



「さむ!洞窟の中、めっちゃ冷えてるぅう!!」
「おま、騒ぐなよ!
 洞窟だから声がめっちゃ響くだろ!?」
「そういう蒼摩も十分うるさい…。」


やっぱり洞窟の中はすごい冷える。
外で野宿より全然ましだけど。
てか、外でやったら百%死ぬ。


「アリアちゃん、大丈夫?」
「う、ん…。」


寒そうに凍えてたから、アリアちゃんの体をあたしの方に寄せる。
これなら、ちょっとあったかいでしょ。


「あったかい…。」
「むかしから温まるには人肌が一番なんだよ?」
「…お前が言うと、なんか危ない方向に聞こえるな。」


火を焚いた蒼摩が少し引き気味で下らないことを言う。
…お前、あたしをどんなふうに見てるんだ?


「そんなに冥界の入り口に行きたいんなら喜んでいかせてあげるよ?
 ただし、片道切符だけど。」
「ッ!じょ、冗談だよ!」


ゴキゴキと手の関節を鳴らすと、慌てて謝った。
しょうがない、優しいから許してあげるとするか。


「あははー。次はねえからな?」
「……はい。」


もちろん冗談だけどね。
この程度で切れるほど、短気でもないけどね。


「このあたりで足止めかなぁ?」
「吹雪いてるもんね、そと。」


アリアちゃんとひっついて、
たき火に当たってるとは言えちょっと寒いなあ…。


「このあたりは吹雪くと荒れるから…。
 でもすぐに収まるわ、そしたら街に向かいましょう。」


…その言い方、やっぱりユナはここら辺こと知ってるみたいだ…。
同じことを思ったのか、蒼摩と光牙も首を傾げてる。


「なに、どうしたの?」


それに気がついたユナが怪訝そうな顔で二人を見る。


「いやあ、妙にてきぱきしてるからよぉ。
 ここら辺知ってるのか?」
「え?」


ユナの顔が、暗くなった。
少しだけ、言いづらそうな顔…。



「私、このあたりで育ったのよ。」



へえ!
そうなんだ!



「へえ、じゃあユナの故郷なんだ。
 じゃあ、ユナんち泊めてもらえねえかな?」
「ああ!こんなところにいるよりずっとましだぜ!」



・・・・馬鹿。
ユナの顔色が変わったので気がつけよ。



「ごめんね、無理なの。
 もうだれもいないの…。
 両親も、親せきも…。
 ずっと昔に、戦争でね。」


……戦争。
その言葉を聞いたとき、胸が痛んだ。
嫌な過去が、フラッシュバックした。




「ゴメン…」
「済まねえ…」

しおらしく謝る男子2人。
踏み込んではいけないところに踏み込んだのを察したらしい。


「馬鹿ちゃんどもめ。
 察しろよ。」

鋭くあたしが毒を吐くと、
ユナは困ったように笑ってあたしをたしなめた。


「いいのよ。
 私だけじゃないから。」



私だけじゃない、かぁ…。
ユナは強いなあ…。



「じゃあ、ユナはずっと一人だったのか…?」
「そうね…。
 小さいころから、だれにも頼れなかったからね。」
「確かに、ユナは昔からしっかりしてそうだからな!」
「確かに!」


いまでも十分しっかりしてるし!


「ええ!?
 そんなこと無いわよ!
 ・・・そうね、昔一人だけ、助けてくれた人がいたから。」


ユナが昔の事を話してくれた。

パンを盗んで、アテナの聖闘士に会ったこと。
その人に他人としての道を正してもらったこと。
その人の名前が、孔雀座のパブリーンということ。


「パブリーンはいつも言ってたわ。
 “考えて第三の、もっとベストな方法を探しなさい”って。」
「いい人だな…。」
「パンを盗る盗らないじゃなく、パンを稼ぐ方法を見つけなさいってか・・・。」
「人間的に、素晴らしい人だね。」



ウチのアホ師匠に見習わせたいね…。
そういう面は。


「私は、彼女みたいになりたかった。
 アテナの聖闘士になって、世界中から私みたいな子を出さないように、
 幸せを得られない悲しい子供をつくらない方法を探すってきめたの。
 だから私は、パブリーンに志願したの。」


あたし達はずっとユナの話を聞いた。
ユナの星読みの才能は、昔からってことか…。
羨ましいなァ…。




「そしてパブリーンは私を鍛え、パライストラに入学させてくれた。」
「パブリーンはユナのお師匠様ってわけか。
 友の師も我が師も同じっていうし、もっと話を聞かせてくれよ!」
「あたしも聞きた―い!」
「そうして、その師匠とはどうなったんだ?」

「…あってないわ。」

「あってない?」
「行方不明?」


…まさか最悪なこととかになってしまったんじゃ。
思わず暗くなってしまったが、ユナは何でもないように言葉を繋ぐ。


「聖闘士は、世界中でやることがあるんだもの。
 仕方ないことよ。」
「確かにね…。
 あたしのお師匠も、一度任務に行くと聖域には中々帰ってこなかったりしたな…。」


昔はさみしくて、泣いてたことも多かったけど…。
最近じゃ、

“任務いってくるわ。”
“当分帰ってこなくていいっすよ。”
“馬鹿!てめえも一緒に来るんだよ!”
“えぇ!?”

って感じな会話が多かったな…。
もう、二度とできないけど…。

アリアちゃんが、あたしの手とユナの手を掴んだ。
そして首を傾げながら聞いた。


「さみしい?」
「そうね。でも、パブリーンならきっと…。」


そこまで言った時慌ててユナが立ちあがった。


「や、やだ!私こんな話しするつもりなかったのに!」


そして、雪で作った壁をぶち壊した。



「さあ!吹雪も止んだし、早いところ移動しましょう!
 町でちゃんと、体を休めないとね!」



慌てて外に出てったユナ…。
そっか、恥ずかしいんだ。


「っふふ!ユナ可愛い―!」



あたしと蒼摩と光牙は笑った。
そして、街を目指してまた歩き出した。







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