脅威!?白銀の毒!




「くくく…美しい聖衣だ。
私が貰ってあげましょう。」


あたし達は倒れてるユナ、そして、
その倒れてるユナの隣でしゃがむデカ物を見つけた。


「その手をどけろォ!」
「今すぐユナから離れねえと冥界に送るぞてめえ!」


きたねえ手でユナに触れんじゃねえぞ!てめえ!
そう叫ぶとユナから手を離して立ち上がった巨漢。


「おや、もう二匹きましたね。」
「お前は誰だ!ユナから離れろ!」
「いや!てめえなんてどうでもいいからさっさとユナから離れやがれ!
 このデカブツがぁッ!」

光牙!こんな奴の名前なんて聞かなくていい!
聞くだけ無駄だ!



「私はフライ!
 蠅座のフライ!
 ソニア様からこの風の遺跡の番人を命じられた白銀聖闘士です!」
「蠅座の白銀聖闘士!?」
「…こんなのが白銀聖闘士だなんて…聖闘士の質も、落ちたことね。」



醜悪な面に反吐が出る。
聖闘士の質が落ちていることについては今更だろう。



「ペガサス聖衣!」
「南冠座聖衣!」


このデカブツを倒すためあたし達は聖衣をまとった。
とりあえず、あいつのことは光牙に任せてあたしはユナを!


「サンドウイルス!」
「ッ!」

そう思った矢先蠅座の口から出てきた紫色をした霧のような何か。
いやな予感がして口をふさいだが、間に合わなかった。



「な、何だ…体の力が、抜けて…。」
「ッうぁ…!?」


体の力が抜けて、思わずその場に倒れこんだ。
まさか、毒!?
くそ!なんて厄介な・・・!


「私のサンドウイルスに感染したのでしょう?
 動けないでしょ?小宇宙を燃やすことも出来ないでしょ?
 こっちも素晴らしいペガサスの聖衣!」


光牙のペガサス聖衣を見てうっとりする蠅座に鳥肌が立った。
気持ち悪い…。
何だ、あの変態下衆蠅野郎!


「聖衣を、どうするつもりだ…?」
「マルス様への捧げものにするのです!
 私はこれまで、マルス様に逆らう聖闘士から聖衣を奪い捧げものにしてきた…。
 今度は、黄金聖闘士にだってさせてもらえるかもしれませんよ!?」

「そんなことをして、白銀聖闘士になったのか!?」

予想外の言葉に、この蠅座に対する気持ち悪さ以上の不快感が身を駆け巡る。

「マルスめ…。
 ここまで、聖闘士を腐敗させやがって…。」


誇り高き、黄金聖闘士にこんな下衆がなれるわけないだろう!?


「どんなことをしてなったかは問題ではないのです。
 白銀聖闘士になったことに意味があるのですよ…っぐう!?」
 
倒れていた光牙が、蠅野郎の顔面を殴る。
おぉ!


「聖衣はアテナのために、アテナを守るためにきるもんだ!」
「光、牙…。」


よくやった!光牙!
ッグ…あたしのからだも、うごいたら…。



「アテナを守ったとして、アテナが私に何をしてくれるというんですかぁ――っ!」
「光牙!」

逆上した蠅野郎に、柱にたたきつけられる光牙。
ッ、この、クソ野郎が!


「捧げものをしたらマルス様は私を白銀聖闘士にしてくれたのです!」


肉団子の様な体を、なんども倒れた光牙にたたきつける蠅野郎。
く…この体さえ、動けば!


「神話の時代から伝わる、聖衣を着るに、値しない下衆野郎め…。」
「ふはははは!何とでも言いなさい!
 どうせあなたも、聖衣を奪われるのですから!」


誰がてめえなんぞにこの体を、この聖衣を触れさせるか!
てめえにさわられるくらいなら今すぐ冥界の穴に落ちた方がましだ!

「ふっふふ!もう充分に苦しんだでしょう!
 さあ!そろそろとどめを刺して聖衣を頂くとしましょうかぁ!」
「光牙ッ!」


あのデカ物が、小宇宙を高めた。
や、やばい!


「!」


動かない体を無理に立ち上げて、光牙を助けようとした時、誰かがあたしの手を引いた。
そしてその人は光牙の事も引っ張って、走った。


「ユナ…!?」
「ユナ!」


あたしと光牙の手をひいて前を走るユナ。
その顔には、かすかだけど生気がみなぎってきてる・・・。


「っく、小癪な真似をしてくれますね・・・。
 許しませんよぉ!?」
「っち!積尸気 魂ッ!?」


あたしが振り返って魂を爆発させようとした時、
ユナがあたしの事を突き飛ばした。


「ぅあ!?」


力の入らない体は前のめりになって倒れた。


「ユナ!?」


同じく突き飛ばされた光牙。
あたしと同じく、その行動に驚く。


「はぁああああ!!!!」

力も、小宇宙もろくに燃やせない状態であの肉団子のコマの様な動きの攻撃を
受けとめようとするユナ…。

む、無茶だ!

「ぅあぁあッ!?」

「ッユナ!」
「あぁ!?」


押し負けて、柱に激突するユナ。
っくそ!

「他愛もない…。
 コイツの聖衣からもらうとしますか…。」


ユナの聖衣に手を伸ばす下衆…。
やばい、もう堪忍袋のが破れ跳びそうだ…。
つーか、もうとっくのとうにぶちぎれてるんだけどね…。


「やめろ…
ユナにさわるなッ…。」
「ユナにさわんじゃねえよ、この下衆蠅野郎…ッ!」


あたしと光牙が、同じタイミングでいう。
怒りで、小宇宙がみなぎってくる…。



「ほう、お前らにまだそんな小宇宙が残っていたとはね!」

「戦えるさ…!
 俺たちには、聖衣を着る理由があるんだからなッ…!」
「小宇宙なら、残ってるよ…!
 爆発しそうなくらいね!」


小宇宙が、体を覆う。
やっと、すこしだけ本調子になってきた!



「守る相手がいる限り…この聖衣を着る!」
「分かったか、この野郎!」

びしっと中指を立てて相手を挑発する。
だが蠅野郎は最後の悪あがき程度にしか思っていないのか余裕の体だった。

「ふぇっふぇっふぇ!
 そのペガサス聖衣、南冠座聖衣頂きますよぉ!?
 フライ・スライダー!」

回転しながら飛んできた蠅野郎。
あたしはスッと腰を落とした。


「燃えろ、俺の小宇宙!」
「冷たく爆ぜろ、あたしの小宇宙!」


跳んできた蠅野郎を二人で受け止める。
ッく…重いッ!


「ふははは!終わりだぁ!」



「燃えろッ!もっと燃えろッ!!」
「はぁあああああああ!!!!!」



あたし達の小宇宙が、さらに高まる。
その小宇宙が、蠅野郎の小宇宙を凌駕する。



「ぅおおおお!
 ペガサス!」
「積尸気!」


「「流星拳/魂葬破!!!」」


流星と、魂の爆発があいつの身に降り注ぐ。


「な、にい!?
 青銅ごときに、私が・・・っ!」



砕け散る白銀聖衣。
アイツの身も、積尸気へと飛ばした。


「聖衣を着るってことは、こういう事なんだよ・・・!」
「分かったか、この蠅野郎!」


「光牙…ホタル…」


ふらりと倒れかかる光牙の体を突然現れた栄斗が支える。
その後から、同じくやってきた蒼摩が駆け寄ってきた。


「やったな!ホタル、光牙!」
「ああ」

「む、だに疲れたわぁ…。」


倦怠感以外は、大した容体もないし…。
どうやら毒も抜けたみたい!
ほっと一息ついていると、アリアちゃんがユナに近づいた。


「ユナ、あなたの小宇宙を少し貸してほしいの。」
「え…?」

「あなたの風の小宇宙が必要なの。」


…そっか。
あの番人っての倒しただけでまだ目的は達成してないんだっけ?


「風のコアを壊すために!」
「わかった。あなたにはそれができるのね。」
「頑張って!二人とも!」


二人が風のコアに向かって手を重ねる。
そして小宇宙を高めた瞬間、まばゆい光が目を遮った。


「ぅはあ!?」








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