良い子





「よっ!」

あたしがもどった場所はあのバベルとかいうとうじゃなくて、その近くの村。
その方が皆と合流する可能性も高いし、物資ももらいやすいし。


「もう、こっちは夜かぁ…。」


すっかりと火が落ちた空を見あげた。
あれから、何日たったんだろう?
もしくは、まだそんな時間はたってないとか?
向こうにいると時間が分かんなくなるんだよなあ…。


「そこにいるのは誰!?」
「!」


鋭く投げられた詰問にハッとする。
村の人…?
ううん、小宇宙を放ってるってことはそれはないか。
・・・・でも、なんか聞いたことあるような声な気がするんだけど。
暗くて顔がよく見えないなァ…。


「……ホタル?
 もしかして、ホタル?」
「・・・その声、もしかしてユナ?」
 
声の主を凝視すると、やっぱりユナだった。
良かった…。
無事だったんだ。


「無事だったのね!
 あなた、どうやってここに…?」
「ちょっとね。
 それより少し休ませてもらってもいい?
 ある程度なおしたとはいえ、少し休みたいんだ…。」

ユナにあって安心したのか、急に体が傷みだしてきた。
うぅ…情けない。

「そうね。
 さあ、こっちに来て!」


ユナに肩を貸してもらって、何とか歩く。
今まで溜まった疲労まで一緒に出てきて、世話ないなァ…。









ガチャ


「大丈夫、私よ。」
「・・・ちゃおっす。
 アリアちゃん。お久しぶり」
「あ…。」

小さな馬小屋の中に、アリアちゃんはいた。
いきなり野宿はきついから、ユナが気を利かせたんだろうなァ。


「アイタタタ…。」


なんとか、わらの上に座って体を休める。
あー…痛い。

「大丈、夫?」
「うん。
 伊達に何年も聖闘士やってないからね。
 これくらい、屁の河童だよ」


アリアちゃんにまで心配されるなんて、あたしもまだまだだなァ…。


「強がりはイイから傷を見せなさい。」
「アタタ!
 無理矢理服脱がそうとしないで!」


自分で脱ぐから!
お願いだから、破く勢いで服を脱がそうとしないでぇ!
半泣きで懇願してどうにか服を脱ぐと、ユナが塗り薬をぬってくれた。


「そんなにひどい怪我じゃないわね。
 頭の傷以外、外傷は特に見られないし…。」


まあ、ここに来る前ヒーリングであらかた治しちゃったしね。
おかげでへとへと…。


「ありがと。
 自分じゃ何も持ってなくて、血が出てても包帯とかまけなくて…」
「でも黄金聖闘士と一対一で戦ってこの程度なんだから、大したものね」
「…敵前逃亡しちゃったけどね」


久々に悔しい思いしたな…。
いくら相手が黄金聖闘士とは言え、
敵を目の前にして逃げちゃったんだから…。


「退くのも戦略の一つよ。
 死んだら、元も子もないじゃない。」
「まあ、そうなんだけどね。」
「それより、あなたもご飯にしましょう。
 パンがあるけど、食べる?」
「うん。頂くよ。」


丁度、お腹すいてたし。
というか、あの大騒ぎから何も食べてないし…。


「頂きます!」
「めしあがれ。」


パンにがっつくあたしを、ユナは呆れたようにそれでも優しい目で見てた。
アリアちゃんの方は、興味深そうに、初めて見る珍獣を見るように見てくる。
…一応、人間なんだけどな。


「そういやさ、アリアちゃんにあたしの名前をいってなかったね。」
「え…?
 あ、う。」

戸惑うアリアちゃんに手を差し出す。

「あたしは、南冠座のホタル。
 よろしく!」
「よ、ろしく…。」

差し出された手は、取ってもらえなかった。
…アリアちゃんは、人と接するのが苦手みたいだなあ。。
あたしも、師匠と会う前はこんな感じだったし、わかる気がする。

「今日はもう、疲れてるだろうしもう寝ましょう。」
「…ちなみに聞くと、
 あれから何日くらいたったの?」
「ホタル。
 頭でも打ったの?
 まだあれから半日しか経ってないじゃない。」
「・・・・そうでしたね。」

なるほど。
まだその程度しかたってないのか…。
黄泉平坂は時間とかそういうのとは関係ないから、自然と分かんなくなるんだよね。


「・・・・もう寝ましょう。
疲れを癒さないと。」
「そだね…。」

ユナと一緒にわらの上に横になると、瞼が一気に重くなった。
自分でも知らないうちに、ここまでつかれてたか…。


「あの・・・・その…
 あ、りがとう…。」

・・・・なんか、新鮮だな。
そんなふういってもらうの。
向こうじゃ、誰もありがとうなんて基本言わないし。


「勘ちがいしないで。
 私は光牙との約束のためにあなたを守っているんだから。」


…きついなあ。ユナは。


「・・・・それでも、助けてくれて、ありがとう…。」


…アリアちゃんは、本当にいい子だ。
本当に素直で、羨ましくなるよ。



「・・・・・。」
「・・・・お・・・お、やすみなさ…い。」
「…おやすみ。」


・・・・こんないい子を、マルスのクソ野郎に誘拐させるもんか。
あいつは、絶対積尸気であの世に、送って…や…る。


そこまで思った時、睡魔に負けて夢の世界にレッツゴ―した。









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